研究概要 |
平成16年度は,主に2つの事項について研究を行い,前年度までの成果と合わせ,学位論文にまとめた.1つ目は,前年度までに研究開発を進めてきた,衛星全体を把持,引き込むことで,制御性能の劣る超小型衛星を確実にドッキング可能とするドッキング機構のドッキング性能評価を行った.具体的に述べると,まず本機構が超小型衛星を把持する際,大きく2つの把持状態が発生し,それぞれ「完全把持」および「不完全把持」と区別する.そして,それぞれの把持状態によって,その後の引込制御やドッキング可能性が異なる.また,どちらの把持状態になるのかは,進入時におけるドッキング機構と超小型衛星の相対位置姿勢誤差と強い関係があることから,ドッキングが可能となる相対位置姿勢誤差領域を実験的に導くことで,本研究で提案したドッキング方法および機構の有効性および性能評価を行った.結果,本研究で提案したドッキング機構は,小型・軽量・高剛性・高強度・低制御性能という超小型衛星の特徴を生かし,確実にドッキングするために有効であることを示した.2つ目は,前年度に引き続き,超小型衛星をロケットで打ち上げる際に必須で高信頼性が要求される分離機構を,JAXA/ISASのM-Vロケット6号機のバランスウェイト用スペースを利用した軌道上機能実証実験を行うための実験システムの設計開発を行った.前年度までに,実験計画の立案,ロケットと実験装置とのインターフェース部の開発を行い,本年度は実証対象となる分離機構,分離後の分離マスの挙動評価するための計測システムを開発,インターフェース部と統合した後,振動・衝撃・温度といった打ち上げ環境下での動作確認を行い,打ち上げに際して問題が無い事を確認した.そして,本実験装置は,平成17年3月に内之浦宇宙センターにて,M-Vロケット6号機に組み込み,平成17年中の打ち上げに向けての待機段階にある.最後に,ドッキング機構および分離機構が持つ2つ機能を融合した分離ドッキング機構システムの必要性を提案し,学位論文にまとめた.
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