研究課題/領域番号 |
03J04438
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
国文学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 陽介 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2005年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2003年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 跖婦伝 / 洒落本 / 老荘思想 / 三教一致 / 朱子学 / 中国文学 / 大学 / 四鳴蝉 / 都賀庭鐘 / 玉簪記 / 四声猿 / 六十種曲 / 南戯 / 曲牌 / 白話 / 照世盃 / 清田たん叟 / 中国 / 和刻本 / 唐本 / 佐伯文庫 |
研究概要 |
近世中期日本において、中国文学の影響を受けて新たに成立した文学ジャンルの一つに「洒落本」がある。今年度は、今日所謂「洒落本」とよばれている作品のうち、もっとも初期に属し、前期戯作界に一名をとどろかせた作品、宝暦三年(一七五三)正月刊『跖婦伝』半紙本三冊を取り上げ、その語彙・表現からうかがわれる作者の思想および精神基盤について、これまでの注釈書類には見逃されていた新たな論点を提示し、さらに原文に即した注釈的な考察を試みた。拙稿「『跖婦伝』小考」(『京都大學國文學論叢』第十五号、二〇〇六年三月)がそれである。『跖婦伝』には、「日本古典文学全集」第四十七巻に中野三敏氏の注釈が備わる。しかし、その作品理解は、近世中期に流行した老荘思想の影響を過大に考慮し過ぎた憾みがある。本作は、老荘思想の流行現象をうまくとらえたものではあるが、それ以上に当時としてはきわめて常識的であった初学者向けテクスト、『大学』『中庸』『論語』など、儒学の基礎的文献によって培われた、あくまでも朱子学的な精神基盤にもとづきつつ、三教一致論的な視点から色道論議を衒ってみせるという戯作だったのである。全集本の注釈には、そうした朱子学上の基礎的文献に対する配慮の欠如から、本来取り上げるべき典拠が数多く指摘されていなかった。本稿により、都賀庭鐘『四鳴蝉』に中国白話に訳出されている「やぶれば。ぐわちもなかりける。」という表現や、「粋過ぎれば虚なり 虚なければおぼれやすし」「野夫飛で粋にいたり。真御侍たちまち恋の淵にはまる。弥高く弥堅し。」「天まさに跖婦を以て拍子木とせんとす」などの表現に、正しい解釈を提供することができたのであり、それは些細なことではあるが、着実な研究成果といってよいものであろう。
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