研究概要 |
近年、キラル相間移動触媒を用いたグリシン誘導体の不斉アルキル化反応による、α-アミノ酸合成が活発に研究されている。しかし、これまでに開発されたキラル相間移動触媒は、そのほとんどがシンコナアルカロイドから誘導した触媒であった。これらの触媒は、触媒修飾を行うには限界があり、より精密な触媒設計を行う際の妨げとなる。そのような背景の中、我々の研究室では、よりチューニングの容易な、ビナフチル骨格を有するキラル相間移動触媒の開発に成功している。今回本研究では、このビナフチル骨格を有するキラル相間移動触媒のデザインを基に、ビナフチル基の4,4',6,6'-位に様々なトリアルキルシリル基を導入した新規キラル相間移動触媒をデザインした。本触媒は、これまでの触媒よりも高い対称性を有しており、その合成をより簡便に行うことができる。様々なトリアルキルシリル基を導入した触媒の不斉触媒能を検討した結果、ジメチルオクチルシリル基を導入した触媒が、最もよい結果を与えた。また、本触媒のデザインを基にフルオロアルキル鎖を導入した触媒を合成し、フルオラス溶媒による抽出により、簡便に触媒の再利用が可能なフルオラスキラル相間移動触媒の開発にも成功した。 さらに、合成の簡便な、ポリアミンとビナフチル骨格からなるキラル相間移動触媒を開発し、これがフェニルアラニン誘導体の不斉合成における非常に有効な触媒として機能することを見いだした。
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