研究概要 |
農耕地の土地生産力の低下が指摘されている、西アフリカ半乾燥熱帯圏に位置するブルキナファソ国北部・Takabangou村において、当地域の農業生態系での養分動態を知ることを目的として以下のことを調べた。 畑レベルでの肥沃度維持システムを知るため、栽培作物であるミレットによる持ち出し(穀実・作物残渣)と粗大有機物の投入(牛糞)の収支から土地劣化の程度の把握をおこなった。投入された牛糞の散布密度と散布域を測定した結果、牛糞の散布密度は2.2t/ha、散布域は1.9haであり、養分量にして25.2kg N/ha,4.5kg P/ha,12.3kg K/haに相当する。また、ミレットによる持ち出し量は2.2t/haとなり、養分量にして16.8kg N/ha,2.0kg P/ha,42.3kg K/haに相当する。これらのことから牛糞として投入された養分N、P、Kのそれぞれ、0.67倍、0.4倍、3.4倍量が持ち出されていることがわかった。 また、牛糞として畑に投入される養分の由来を明らかにするため、牧畜民・フルベが管理している牛群の放牧範囲をGPSにより記録した。その結果、放牧範囲は、牧畜民が宿営しているキャンプ地を中心として半径約5kmの円内となり、牛糞として畑に投入される養分は広範囲から集められていることがわかった。 牛糞として投入された養分はN、P、Kそれぞれ、1.5年、2.3年、0.3年で系外に持ち出されること、過去の調査より牛糞の散布は5年に1回の割合でおこなわれていたことから、牛糞の投入がおこなわれているにもかかわらず、投入された養分量では持ち出し養分量を補えていないことになる。さらに、今年は砂漠バッタの被害を受けており、この結果は過小評価されたものである。よって上で述べた結果よりも、もっと早い期間で養分の持ち出しがおこなわれていると考えられる。
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