研究概要 |
真核生物の細胞内は、緻密に分化した膜系(オルガネラ)で満たされ、その多くがダイナミックな膜の流れ"メンブレントラフィック"によって結ばれている。本研究では植物細胞のダイナミックな膜の動態を可視化することにより、メンブレントラフィック機構の解明を目指してきた。本年度の成果は、以下の通りである。 1、SNARE分子は、小胞輸送において特異的な膜融合を担うタンパク質であり、アミノ酸の相同性から5種類(Qa-SNARE,Qb-SNARE,Qc-SNARE,R-SNARE,SNAP-25)に分類されている。それぞれのSNAREタンパク質が特異的なオルガネラに局在することで膜融合の特異性を決定していると考えられているが、SNARE分子が特異的なオルガネラに局在する機構についてはほとんど知られていない。そこで、SNARE分子の細胞内局在機構を明らかにすることを目的として、アミノ酸の相同性が高いにもかかわらず細胞内局在が異なるR-SNARE分子をモデルとして、細胞内局在が異なる分子間の様々なドメインをシャッフルさせたキメラ分子を用いて特異的なオルガネラへの局在に必要なドメインの単離を行った。その結果、SNAREモチーフのN末端側に存在するlonginドメインとlinker領域が液胞膜への局在を制御していることを明らかにした。 2、SYP41/AtTlg2a(Qa-SNARE)の細胞内局在から、高等植物のトランスゴルジネットワーク(TGN)は動物のようなゴルジ体とひと続きになったオルガネラではなく、ゴルジ体とは独立したオルガネラであることを明らかにした。また、TGNの動態を明らかにするためGFP-SYP41融合タンパク質を発現する遺伝子組み換え植物を作成した。現在、詳細な膜動態を解析中である。
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