研究概要 |
本年度は,ループ管の冷却効率の向上を目的とした研究を行った.現段階において,室温から氷点下30℃まで,最大約50℃の温度低下に成功している. ループ管の作業流体とスタック壁の間に形成される熱境界層と粘性境界層が,ループ管の冷却特性に影響を与えていると考え,それぞれの境界層の厚みとスタックの流路半径の関係を考察した.熱境界層内では効率的な熱交換が行われるが,粘性境界層内では熱交換が効率的に行われない.冷却特性を向上させるためには,スタックの流路半径を熱境界層の厚みと同程度とし,粘性境界層の厚みをできるだけ小さくするような条件の設定が望まれる.特に,熱境界層の厚みはスタックの温度によって変化することから,スタックの流路は,スタック内の温度勾配に則したテーパー状になったものが最適であると考えられる.また,粘性境界層に関しては,スタックの流路半径より粘性境界層の厚みが小さくなるようにループ管が共鳴周波数を自励的に選択していることが判明した. ビデオカメラによる観測やループ管内の熱流の流れから,ループ管内には音響流が発生していることが確認された.音響流はループ管の冷却特性を低下させているため,低減する方法を検討する必要がある. ループ管の冷却特性は,管内に充填する気体,管内圧力,発生音波の周波数,スタックの材質や流路半径,ループ管の全長など多くの要因に左右される.熱音響冷却システムとしての実用化に向けては,これらの要因を複合的に勘案し,冷却特性のさらなる向上を目指す必要がある.
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