研究概要 |
新規なクラスレート形成複素環蛍光性色素を用いて固体蛍光発光性と結晶構造の相関性について基礎的に調べ、以下に示す重要な結果を得た。 1.結晶中での色素間のドナー-アクセプター型のスタッキングによるπ-π相互作用や分子間水素結合は、固体蛍光発光性を著しく弱めることが明らかとなった。 2.固体状態で蛍光性色素がゲスト分子包接によって蛍光発光性を大きく変化させる現象とメカニズムは、固体蛍光スペクトル測定と単結晶X線構造解析から説明することができた。 3.色素の固体蛍光スペクトル特性と単結晶X線構造との相関性を調べることによって、多種多様なニーズに応えられる固体蛍光発光性色素の設計・製造が期待できる。 以下に、具体的な内容について示す。 1.複素多環キノール系蛍光性色素の分子設計と合成 強い固体発光型蛍光性色素を創出することを目的として、イミダゾ[5,4-a]アントラキノール系蛍光性色素(1)および(2)のイミダゾール環をN-アルキル化した誘導体(3)と(4)、ベンゾ[b]フラノ[1,2-d]ナフトキノール系蛍光性色素(5)の水酸基をアルキル基に置換した誘導体(6)を高収率で合成することに成功した。 2.固体光物性と結晶構造との相関性 得られた蛍光性色素の固体励起および蛍光スペクトル測定を行った結果、色素(1)、(2)および(5)に比べて、色素(3)、(4)および(6)は蛍光波長の短波長シフトと60〜120倍もの蛍光強度の増大が見られた。単結晶X線構造解析から、(3)、(4)および(6)では色素間のドナー-アクセプター型のπ-π相互作用や分子間水素結合は消滅しており、期待通りキノール系蛍光性色素の結晶構造を制御することによって固体蛍光発光性を大きく改善することが出来た。 3.固体蛍光性色素材料の創出 本研究で得られた研究成果は2報の国際雑誌への公表、1件の国際特許として、社会化および実用化を達成した。
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