研究概要 |
光により光を高速にスイッチできる全光スイッチは次世代のネットワークを支える素子として実現が嘱望されている。その実現には大きな非線形光学効果を持つ物質が必要となる。本研究の目的は、電子相関の強い遷移金属酸化物を超格子化することにより低次元構造を作成することで、大きな非線形光学効果をもつ新物質の探索を行うことである。 今年度は、前年度に発見したSr2NiO3とおなじ構造をもつ新しい強相関電子系低次元物質Sr2CoO3の合成を行った。この物質は、Sr2NiO3よりも作成条件が厳しく、新しく開発したSr2(Sn,Ti)O4というバッファー層を用いることによりはじめて作成が可能となった。非線形光学効果の測定はSr2NiO3、(Ba,Sr)2CuO3に関して行った。(Ba,Sr)2CuO3に関してはこれまで酸化物ではもっとも非線形光学効果が大きいSr2CuO3よりも大きな非線形光学効果が観測された。また、新物質であるSr2NiO3は、同じ光のエネルギー領域で比較すると、非線形光学効果が大きいことで知られる一次元物質ポリシランと同程度の大きな非線形光学効果を示すことを発見した。また、前年度に作成した高品質な人工超格子(Sr2MnO4/LaSrAlO4)に関して光学測定を行った結果、物質間の界面において電荷の移動が起こっていることがわかった。このことは、今後物質を設計する上で重要な情報となると考えられる。
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