研究概要 |
炭素-炭素σ結合は通常は混成軌道の大きいローブの重なりによって形成されるが、特別な場合として、軌道の小さいローブに重なりによって形成される異常なσ結合、いわゆる反転σ結合のある事が知られている。しかし、反転ケイ素-ケイ素σ結合を持つ化合物を実験的に観察した例はこれまでまったくなかった。わずかに、ビシクロブタン類について理論的に反転ケイ素-ケイ素σ結合を含むと予測されているのみであった。本研究では初めての安定な反転架橋σ結合をもつ1,3-ジシラおよび1,3-ジゲルマビシクロブタン(1および2)を合成し、その構造と反応性を明らかにした。1,3-ジシラビクロブタン1の架橋ケイ素-ケイ素結合はビラジカルてきな反応をしめした。1は遮光下-70度で四塩化炭素から塩素を引き抜き1,3-ジクロロ-1,3-ジシラシクロブタン3を収率92%で与えた。また1は室温でシクロヘキサジエンから水素を引き抜き1,3-ジヒドロ-1,3-ジシラシクロブタン4を定量的に与えた。1は室温、無触媒でフェニルアセチレンと反応し、付加体5(43%)と6(42%)を与えた。1の架橋ケイ素-ケイ素結合はケトンとも容易に反応した。1は室温でベンゾフェノンと反応し、C=O二重結合に1の1,3位のケイ素が付加したビシクロ生成物7を与えた。1はアセトフェノンと室温では反応しないが、70度で反応し、環化付加生成物8を与えた。以上のように、反転架橋σ結合をもつ,1,3-ジシラビシクロブタン1の架橋ケイ素-ケイ素結合は種々の試薬とビラシカル的に反応することを見出した。その他1はアセトニトリル、トルエンとも1,3-ビラジカルとして反応した。また水、アルカリ金属、カルコゲン、光照射に対して高い反応性を示した。
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