研究概要 |
これまでの研究により,東北日本におけるプレート間カップリングの空間分布を推定し,宮城県沖や十勝沖では大地震の発生に向けてプレート間が強く固着していることが示唆されていたが,今年に入り,宮城県や十勝地方で被害地震が発生した.5月26日,7月26日に宮城県で発生した地震は,それぞれスラブ内と内陸において発生した地震であり,近い将来発生が懸念されている宮城県沖地震に伴って,スラブ内や陸側プレートに歪が蓄積して引き起こされたと考えられる.本研究では,7月に発生した宮城県北部地震について,GPS観測と水準測量による地殻変動データを用い,地震時のすべり分布を推定した.その結果,すべり量の大きな領域は震源域の北側に存在していることが明らかになり,これは,地震波形インバージョンによって推定されたすべり分布の特徴とも一致した. また,9月26日には,十勝沖のプレート境界においてマグニチュード8.0の巨大地震が発生した.本研究では,GPSによって観測された地震時・地震後の地殻変動データを用いて,十勝沖地震に伴うプレート境界上のすべり分布及びその後の時間変化を推定した.その結果,地震時のすべり分布については,震源から北北東に約30kmの場所で5mを越えるすべり量が推定された.このような特徴は,地震波形インバージョンによって推定した地震時のすべり量分布と概ね調和的である.また,本研究で推定されたすべり分布から計算される海底での隆起は震源の東側で約1mに達しており,太平洋沿岸地域において津波が観測された事実に対応するものと考えられる.地震後11日間に推定された余効すべりについては,震源の南東の領域に約50cmのすべり量が推定されている.地震時のすべり分布と余効すべり分布とを比較すると,大きなすべり量を持つ領域は互いに重ならず,相補的な関係にあることが示唆された.
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