研究概要 |
染色体が正常に2倍化するには、染色体複製反応がただ1回だけ開始されるように制御される必要がある。大腸菌のAAA+ファミリー蛋白DnaAは、ATP結合に依存した染色体複製開始因子である。ATP-DnaAと染色体上の複製起点oriCとが高次複合体を形成すると、oriC二重鎖DNAの開裂、DnaBヘリカーゼのDNA上への装着など一連の複製反応が進行する。oriC上にはATP-DnaA特異的な結合配列が存在し、このATP-DnaA特異的なoriC開裂に寄与している。複製の進行に伴い、ATP-DnaAはRmA経路によって不活性なADP-DnaAとなる。これまでに研究代表者はRIDA構成因子2種を複合体として精製し、複合体形成とRIDA機能に直接関わる残基を同定している。さらに本年度は両蛋白質の結合比を算出した(JBC,2005)。次に、DnaAの機能構造解析に着手し、oriC開裂能と複製開始能を特異的に欠損した1アミノ酸置換DnaAを見いだした。この変異DnaAは、一方でDNA結合能、ATP/ADP結合能、RIDA感受性、DnaBローディング能、oriC上での高次複合体形成能を保持していた。フットプリント解析から、この変異DnaAはATPと結合しても、oriC上のATP-DnaA特異的な配列へ結合できないことが判明した。今回の変異残基はAAA+ファミリー間で高度に保存されており、オリゴマー形成の際、隣接サブユニットに結合したATPを認識するアルギニンフィンガーモチーフと予想されている。ゆえに、今回の変異残基は、元来、DnaAに結合したATPを認識し、DnaA・oriC複合体中のDnaAがoriC上のATP-DnaA特異的な配列へ結合できるような構造変化をもたらすことで、DnaA・oriC複合体の活性化に寄与するものと思われる(投稿中)。
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