研究概要 |
本研究代表者はRh(I)錯体による4,6-ジエナール類のヒドロアシル化反応を経由する7員環形成反応及びジエン-オレフィンの環化異性化反応を見いだし既に報告している。そこでこれらの二つの環化反応を組み合わせたタンデム型環化反応を計画した。すなわち、側鎖にジエンを持つ4,6-ジエナール類とRh(I)錯体を反応させるならば、まずヒドロアシル化反応が進行し7員環化合物を与え、つづいて7員環内オレフィンと側鎖のジエンとの間で環化異性化反応が進行し、一工程でビシクロ[5.3.0]デセノン骨格を有する環状化合物が得られるのではないかと考えた。そこでまず、(4E,6E,10E,12E)-15-フェニルペンタデカ-4,6,10,12-テトラエナールを合成しRh(I)錯体との反応を行ったところ、目的とする二環式化合物は全く得られず、一段階目のヒドロアシル化反応のみが進行し生成した7員環化合物が66%の収率で得られた。そこで、Thorpe-Ingold effectを利用し、二段階目の反応である環化異性化反応を促進させることを考え、側鎖のジエンと4,6-ジエナールとの間、9位に二つの置換基を導入した基質を合成することにした。9位に二つの置換基を導入した基質は本研究代表者が先に開発したPd錯体によるアルケニデンマロナート誘導体の脱共役を伴うアリル化反応を利用して収率よく合成し、当初の目的であるRh(I)錯体によるタンデム型環化反応について検討した。その結果、ヒドロアシル化反応及び環化異性化反応が順次進行し、二環式化合物が単一生成物として44%の収率で得られた。このようにRh(I)錯体が全く異なる二つの環化反応を触媒し、一工程で立体化学が完全に制御されたビシクロ[5.3.0]デセノン骨格を構築できたことは非常に興味深い。また、本タンデム型環化反応の天然物合成への応用として(±)-Epiglobulolの合成も達成した。
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