研究課題
特別研究員奨励費
(1)前胸腺刺激ホルモン(PTTH)の受容体候補遺伝子(PGR)のショウジョウバエ相同分子の機能を遺伝学的に解析するために、PGRに対するRNAi系統を用いた表現型を脱皮変態の異常の有無を中心に解析している。RNAiによって90%以上の転写産物の低下を認めたが、目立った表現型はなかった。(2)PGRを介したPTTH刺激が、いかにして前胸腺のエクジソン合成を制御するのかを解析するために、前胸腺機能を反映する遺伝子マーカーが欲しい。前胸腺において特異的に機能する遺伝子の同定およびその機能解析を試みた。DNAマイクロアレイやdifferential displayを用いた解析から、複数の候補遺伝子を同定した。このうちの1つCyp306a1は、P450ファミリーに属する新規分子であり、エクジソン生合成の中間段階の代謝過程を担うことを生化学的に示した。さらに、ショウジョウバエにおける一次構造上の相同分子も前胸腺で特異的に発現しており、エクジソン生合成過程に必須の役割を果たすことを遺伝学的手法からも証明した。また、別の新規遺伝子neverlandもエクジソン生合成および昆虫の発育に必須であることを明らかにした。すなわち、neverland機能低下個体では、ショウジョウバエの発育が1齢幼虫期で停止するが、この表現型は食餌中にエクジソンを投与することによって回復した。neverlandは脊椎動物にも相同分子が存在しており、進化的に保存されたステロイド生合成経路の新規制御因子であることが示唆される。さらに、これらの遺伝子をマーカーとして、PTTHシグナルによって転写制御を受けるかどうかを検討した。その結果、検討した4つのマーカーのうち、disembodiedと呼ぶP450遺伝子のみがPTTHによって顕著な転写上昇を示した。PTTHの入力によるエクジソン生合成経路の遺伝子の制御には差があることが分かった。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of Biological Chemistry 279
ページ: 35942-35949