研究課題
特別研究員奨励費
20世紀初頭にアインシュタインによって存在を予言された重力波は、その信号の微小さゆえ未だに直接検出に成功していない未知の物理である。本研究では、数年後に建設を予定している次世代の高感度検出器でこそ重力波を検出するべく、その設計を遂行してきた。重力波検出にはマイケルソン干渉計が用いられ、地面振動や熱雑音をさまざまな工夫で除去した結果、その検出感度は光の粒子性から生まれる量子雑音で制限される。量子雑音は重力波信号に対する干渉計応答を高めることで相対的に減らすことができるので、日本のLCGT計画を含めた次世代の検出器では、干渉計の出力ポートに共振器を組み、重力波信号を高周波帯で増幅して観測帯域を広げる方式が採用される。この方式が重力波検出に向けて多くの利点を生み出すと共に、干渉計全体の制御は従来のものより複雑になってくる。本研究では国立天文台のプロトタイプ実験で得られた知見を元に、解析シミュレーションなどを行なってLCGTの制御方法について検討を重ね、近いうちに結論が出るところまで至った。また、夏期にはカリフォルニア工科大にあるプロトタイプ干渉計の制御実験に参加し、新たな知見を得ると共に、光源雑音が干渉計に及ぼす影響の見積もりをするなど、実験の進展に貢献した。光源雑音に関しては、周波数雑音が輻射圧効果で鏡を揺らすという帯域可変型検出器特有の現象により、安定度に対する要請が高くなることが分かり、周波数安定度の向上が今後の課題として浮上した。
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Applied Optics (accepted)