研究概要 |
低分子量G蛋白質であるRab5は、細胞膜からの小胞の出芽,初期エンドソームへ向けての輸送、融合といったエンドサイトーシス過程全般において、その活性化が必須である分子である。これまでのRab5に関する研究は、主に恒常的な栄養分の取り込み過程あるいは初期エンドソームの融合過程について進められているが、細胞膜からの小胞の陥入、特に刺激に応じた受容体のinternalizationに関する研究はほとんど行われていない。 私はこれまでに新規Rab5結合因子としてRINファミリー(RIN1,2,3)を同定し,Rab5のグアニンヌクレオチド交換因子として機能すること、及び活性化型Rab5とも結合することを報告してきた。さらに、RINが細胞内で初期エンドソームへ輸送される過程の小胞に局在すること、細胞内で四量体構造を形成することを明らかにした。また、RINが細胞膜からの小胞の出芽を制御する因子;Amphiphysin IIと相互作用することを示した。 本年度は以上をふまえて実験を行い,以下の知見を得た。 1)RINファミリーのC末に存在するRAドメインに結合するRas蛋白質群を探索し,RIN1には様々なRas様蛋白質の活性化体が、RIN2にはN-Rasの活性化体が結合すること、またRIN3には用いたどのRas様蛋白質も結合しないことを示した。 2)N-Rasが関与するシグナルであるTNF-α刺激時のJNKの活性化状態をRIN2のRNAi法によるノックダウン細胞で検討した。結果、RIN2のRNAi細胞では、コントロール細胞に比べ、活性化は起こるものの早い段階で収束する現象が観察された。 以上の結果は、受容体刺激によるシグナル伝達と脱感作のメカニズムを有機的に結びつける、極めて先駆的な研究の発端となりうる。
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