研究概要 |
強相関電子系の遷移金属酸化物において新しい熱電材料の開発を行った。主にSr_<1-x>Rh_2O_4、Na_4Ir_3O_8を対象とし、電子物性を明らかにした。 昨年度までに、バンド絶縁体であると報告されていた層状Rh酸化物SrRh_2O_4に対して、Sr欠損の導入により広い範囲(Sr_<1-x>Rh_2O_4,0.1【less than or equal】x【less than or equal】0.22)でホールドープすることに初めて成功した。その結果、x〜0.2においてバンド絶縁体から強相関金属に転移させ、強相関金属相において高い熱電特性が得られることを発見した。本年度、この高い熱電特性が、ドープされたホールのもつスピン・軌道の自由度によりもたらされていることを明らかにし、新しい熱電材料Sr_<1-x>Rh_2O_4に関する一連の成果をまとめた論文をJournal of the Physical Society of Japanに発表した。 また、新しい熱電材料の候補となる遷移金属酸化物の新物質開発を行い、ハイパーカゴメ格子をもつNa_4Ir_3O_8を開発した。Na_4Ir_3O_8は単相で得られない準安定相であるという報告がなされており、結晶構造・電子物性共に不明であったが、Na_4Ir_3O_8単相試料の合成に初めて成功し、これらを明らかにした。その結果、Na_4Ir_3O_8は、遷移金属酸化物では初のハイパーカゴメスピン系をもつMott絶縁体であり、スピンS=1/2の液体状態という特異な基底状態をもつことを発見した。さらにこのような特異な基底状態をもつNa_4Ir_3O_8に対してソフト化学の手法によりフィリング制御を行い、Mott絶縁体から金属状態に転移させることに成功した。この絶縁体金属転移の過程で、高い熱電特性が得られると期待される。この成果について、国内学会で2件発表を行った。
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