研究課題
特別研究員奨励費
体液浸透圧を海水の約1/3に保つ海産硬骨魚類は常に脱水の危険にさらされるため、盛んに海水を飲み、腸でNaClとともに水を吸収し、余剰なNaClを鰓から排出する。淡水海水双方に適応する、優れた浸透圧調節機構を備えるウナギの腸での水やイオンの吸収に、グアニリンファミリーというホルモンが深く関わる可能性を以前に示したが、本年度はその受容体を解析した。COS細胞にて発現させた、ウナギの2種のグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体に対し、ウナギの3種のグアニリン(グアニリン、ウログアニリン、レノグアニリン)は全てセカンドメッセンジャーcGMP産生を示したため、1種の受容体しか知られていない哺乳類と異なり、ウナギには2種の機能的グアニリン受容体が存在することを証明した。作用の強さは、GC-C1:ウログアニリン>グアニリン≧レノグアニリン、GC-C2:グアニリン≧レノグアニリン>ウログアニリンであり、2種の受容体にはリガンド選択性があった。real-time PCR法により、2種のGC-Cは、ホルモンと同様、淡水ウナギよりも海水ウナギの腸で遺伝子発現が有意に高かったため、ウナギの海水適応に腸でグアニリン系が重要な役割を担うことが示唆された。ただし、淡水から海水、あるいはその逆移行後24時間以内では、2種のGC-C遺伝子発現に変化が見られなかったため、環境塩分の変化に対しては、受容体よりもリガンドの方が早く反応することが示唆された。そこで海水ウナギの腸における3種のグアニリンの作用をUssing chamberで調べたところ、前腸ではほとんど効果がなく、中腸と後腸で腸管側からホルモンを投与した時のみCl^-やHCO_3^-が排出する作用が示唆された。グアニリン系により分泌が促進されたHCO_3^-が、腸であまり吸収されない二価イオンと反応し沈殿し、腸内の浸透圧を調節する可能性が予想された。
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Journal of Experimental Zoology (印刷中)
Molecular Biology and Evolution 22・12
ページ: 2428-2434
Comparative Biochemistry and Physiology Part A 139
ページ: 417-424