研究概要 |
地球温暖化の実体解明や将来予測において陸域炭素フラックスの正確な見積もりが不可欠である。純一次生産量(Net Primary Production : NPP)のと生態系純生産量(Net Ecosystem Production : NEP)を衛星データから見積もる場合,光合成活動の特性を植生タイプ毎に把握して、生育環境条件である気温や土壌水分最、水蒸気圧等に対する環境応答をモデルで正確に再現する必要がある。既存の研究では、この応答関数が瞹昧な経験的手法に依存しており、さらにモデル間で大きく異なっていた。このため、NPPやNEPの推定結果が大きく異なり、推定精度にも疑問が呈されていた。 本研究は,陸域炭素フラックスの定量的見積もりの精度向上のため、新たな陸域生物圏モデルBiosphere model integrating Eco-physiological And Mechanistic approaches using Satellite data(BEAMS)を開発し、ローカルからグローバルなスケールでの炭素フラックスの空間的・時間的パターンを明らかにした。本モデルの特徴は、光合成活動における環境への応答を植物生理学に基づいて定義したことにある。この新しい定義方法を採用したことにより、BEAMSによる推定値はローカルな実測値との相関が高いことを確認できた。全球スケール解析の結果では、陸域炭素循環と気候変動の時間変動パターンの関係を正確に捉えていることが示された。これらの研究結果は,今年度に国際学術雑誌Journal of Geophysical Researchで受理・出版され、本研究が国際的に優れた水準であることを認められた。 以上のように、本研究で開発された新たなモデルBEAMSは、従来よりも正確に陸域炭素フラックスの空間的・時間的パターンを推定できるものであり、地球温暖化の実態解明に寄与できる結果を示している。
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