研究課題
特別研究員奨励費
生体肝移植後、免疫抑制剤中止後も、良好な肝機能を維持している、いわゆる、移植臓器に対する免疫寛容状態にある患者が存在する。しかし、その免疫寛容維持のメカニズムは不明である。昨年まで、肝移植後の患者における末梢血中の免疫反応に対し制御性に働くリンパ球の同定、機能解析を行い、生体肝移植後免疫寛容状態の患者において、その末梢血中のCD25+CD4+制御性T細胞、Vδ1γδT細胞が増加し、かつ、それらが免疫寛容状態に関与していると考えられた。本年は、臓器移植後の拒絶反応の一つである液性拒絶に関して研究を行った。液性拒絶反応は現在、十分に制御できる免疫抑制療法は確立されていない。そこで、積極的な液性拒絶反応の免疫抑制療法の検討として、ABO型不適合ドナーからの肝移植における、免疫抑制療法のプロトコールについての研究を行った。本年まで、血液型不適合間肝移植に対して、免疫抑制療法として、全身免疫抑制療法、脾臓摘出に加え、プロスタガンディン、ステロイドの肝動脈からの注入による局所療法を行うことによって、その成績は飛躍的に向上をした。しかし、脾臓摘出によっておこる高頻度の門脈血栓、また、その後に永続する易感染性と問題が多い。そのため、今回、脾臓摘出にかわる免疫抑制療法として、抗CD20抗体(リツキシマブ)の使用のプロトコールを実施し、その結果について研究した。この新しいプロトコールにより、問題となった門脈血栓については解決し、重篤な液性拒絶反応を回避できることが判明した。また、易感染性においてもウイルス感染の頻度は低下し、その点においても期待できる結果であった。さらに細胞性免疫反応による拒絶反応も有意に抑制できた。このプロトコールは今後、血液型不適合肝移植のみならず、液性拒絶反応抑制のプロトコールとして期待できると考えられる。
すべて 2005
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Transplantation Proceeding 37・1
Transplantation Proceeding 37・4
ページ: 1718-1719
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