研究分担者 |
LEITCH E.C. シドニー工科大学, 物理科学部, 教授
FANNING M. オーストラリア国立大学, 地球科学部, 主任研究官
FERGUSSON C. ウーロンゴング大学, 理学部, 上級講師
LANDIS C.A. オタゴ大学, 理学部, 准教授
BLACK P.M. オークランド大学, 理学部, 教授
GRAPES R.H. ビクトリア大学, 理学部, 助教授
河内 洋佑 オタゴ大学, 理学部, 上級研究官
岩田 圭示 北海道大学, 理学部, 助手 (60002226)
中島 隆 地質調査所, 地殻化学部, 主任研究官
時枝 克安 島根大学, 理学部, 助教授 (90032599)
滝上 豊 関東学園大学, 法学部, 助教授 (40206909)
板谷 徹丸 岡山理科大学, 蒜山研究所, 教授 (60148682)
C L Fergusso ウロンゴング大学, 理学部, 講師
C A Landis オタゴ大学, 理学部, 准教授
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研究概要 |
本年度の研究を4月下旬〜5月中旬のフィールド調査とそれ以後の室内研究に分ける。フィールド調査は昨年度の悪天候のため中途半端にならざるを得なかったニュージーランド南島の標高の高い地域をまず第一に行なった。ヘリコプターを使用した効率的調査につとめた。蛇紋岩メランジ中の変成岩ブロックの精査を行い,角閃岩の露頭を発見するなどの成果が上った。またオニカカ片岩中の藍晶石の産状について記載を行なった。ニュージーランドのフィールド調査終了後,ニューカレドニアの調査を行なった。この調査はオ-クランド大学のブラック教授の提案によるもので,オーストラリアのニューイングランド褶曲帯の北方延長がニューカレドニアに出現するか否かを検討することを目的としていた。フィールド調査では緑色岩-チャートの岩相,この上位にのる藍閃石片岩類の産状を調査した。フィールド調査の結果からはオーストラリアのラクラン褶曲帯の延長がニュージーランド西海岸に分布すると考えられることが一層鮮明になったが,ニューイングランド褶曲帯そのものの延長はどこにも確認できないと言わざるを得ない。何故このようなフィールドの関係しか認められないのか,引続き室内研究によって検討した。 広域変成岩の性格を比較するとニューイングランド褶曲帯中の付加体のそれとニューカレドニア基盤岩のものとで共通点を持っており,緑色片岩相あるいはより低温の変成作用によって形成された変成岩である。しかし年代論的に共通なものであることを示すデータは確認できなかった。ニュージーランドの変成岩についても岩相上の若干の違いの他に年代論的に不一致点が多いことが明らかとなった。特にオニカカ片岩の年代が白亜紀であったことは現地の研究者にショックを与えた。オーストラリアの地帯構造論との類似性が認められないことが明らかになった上に,古い構造に斜交する白亜紀の火成岩類の活動が新たにクローズ・アップされることになり,ニュージーランドの研究者は本研究の終了を特に残念がっている。結局,ニューイングランド褶曲帯成立後,タスマン海のオープニングまでの期間にプレート運動の方向が転換し,ニューイングランド褶曲帯が横ずれ断層によって消滅させられると共に,白亜紀の花崗岩帯がオーストラレイシア縁辺部に発展したという地史を組み立てざるを得ない。これらの根拠となった岩石学的・年代学的根拠は次の通りである。 1)ラクラン褶曲帯中の中〜後期オルドビス紀のチャート類(放散虫・コノドントによる年代判定) 2)エクロジャイトの上昇年代が325Ma前後であり,それ以前に800℃,12-15kbの条件下にあった(温度・圧力はEllis&Green,1979に基づくもの)。 3)Tia花崗閃緑岩のRb-Sr全岩年代が350±49Maである。またSHRIMPによるU-Pb年代はジルコンの従来の方法による年代304Maより若干若くなる。 4)花崗岩類の貫入は三畳紀まで続くが,周囲の付加体中にNamansiteなどの特殊なMn鉱物を形成した。 5)ニューカレドニア,オニカカ片岩,Cr雲母脈,南極ウィルソン・テレンの変成岩・花崗岩は100Ma年代の年代を示す。つまり現在の環太平洋南西部は100Maの変動帯で取り囲まれている。(Ar-Ar及びK-Ar年代) 6)ウィルソン・テレン(南極)に500Maの花崗岩があり,100Maの花崗岩が近くに分布する。 7)ペル紀の火山弧堆堆物がニュージーランド南部に分布する他,ニューイングランド褶曲帯中部(ブリスベーン付近)の東に分布している。この間に衝突帯が想定できる 8)ニュージーランド南島西海岸にあるデポン系には明りょうな岩相の違うブロック上の産地があり,両者の間に堆積時の大きな距りが想定できる。 以上のデータを中心にして,オルドビス紀の海洋島弧,その東に発達したニューイングランド褶曲帯,そしてこれらを切るペルム紀のブロックとさらに斜交する白亜紀の火成活動帯を想定しうる。オルドビス紀の海洋島弧が古太平洋の初期の沈み込み帯を形成している可能性が考えられるので,ニューイングランド褶曲帯の延長が分断されるのは古太平洋の拡大にともなうプレートの移動方向の違いに帰することも可能であり,今後は太平洋の東北側を含めた検討が必要となるであろう
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