研究分担者 |
馮 耀宗 中国科学院, 昆明生態研究所, 所長 教授
江 愛良 中国科学院, 自然資源総合考察会, 教授
野元 世紀 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (20156235)
永塚 鎮男 筑波大学, 応用生物化学系, 教授 (00090994)
三浦 修 東北大学, 理学部, 助手 (80004480)
白坂 蕃 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40014790)
菊池 多賀夫 岐阜大学, 流域環境研究センター, 教授 (00004383)
岩田 修二 東京都立大学, 理学部, 教授 (60117695)
石川 慎吾 高知大学, 理学部, 助教授 (90136359)
FENG Yaozong Kunming Institute of Ecology, Chinese Academy of Science
JIANG Ailiang Commission for integrated Survey of Natural Resources, Chines Academy of Science
黄 玉生 雲南省気象局, 副所長, 上級工程師
八木 浩司 防衛大学校, 講師
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研究概要 |
本研究の目的は,地球圏-生物圏国際共同研究計画の研究領域6「古環境の変遷」研究課題(3)「モンスーン・アジア地域の古環境変遷」の一環として,最終間氷期及びそれ以降の冬季の季節風と夏季の南西モンスーンの消長と挙動の変遷及びその古環境全体への影響を追跡することを目的として遂行された。 初年度(平成4年度)は,雲南省北西部,麗江の南方の剣川地区,大理市周辺の蒼山及び〓海,元江(ソンコイ川)・瀾滄江(メコン川)分水界の哀牢山地区,西双版納の景洪,〓崙,〓臘地区,元江地区,昆明市周辺で,花粉分析及び年代測定資料の採取,地形調査,植生調査,土壌調査,土地利用調査を行った。 これまで花粉分析研究のない哀牢山地区,熱帯気孔の景洪地区で良好な資料が採取できたことは,全気候地域にわたる古環境の復元に大きな手がかりを得たことになる。植生調査では,特に哀牢山,〓崙地区で,自然保護地区の天然林と地形との対応を調査した。土地利用調査では,ことに自然破壊の著しい昆明周辺,大理周辺,元江地区で伝統的土地利用,現在の土地利用について集中的に調査を行なった。持ち帰った資料については,すぐに分析を開始した。 平成5年度は,雲南省最北西部の徳欽・中甸・麗江・大理・哀牢山地域の調査を行った。このうち,徳欽・中甸・麗江地域では,地形・植生・土地利用の調査,花粉分析・古地磁気・年代測定資料の採取などを行った。大理・哀牢山地域では,土壌・土地利用の調査を行った。これらのうち,特に徳欽・中甸地区は,これまでほとんど日本人の詳しい調査がなされていない地域である。 平成6年度は,最終年度なので,現地調査はこれまでの経験に基づいて行った。まず,植生は,西部の剣川付近において,自然林,最近保護地区になった森林などを比較調査し,雲南省の最も一般的な森林である暖温帯林に対するヒューマンインパクトの影響を明らかにした。地形は,これまで記録のない,剣川付近の山地の氷河地形を調査した。その結果,雲南省最北西部から大理付近にいたる高山について,氷河地形の連続したデータを得た。同時に,本年は将来の研究に備えて,これまで調査を行っていなかった南東部から北東部にかけての概査を行った。 9月には,広島市で,IGBP/PAGESに関連する他の研究組織とともに「熱帯・亜熱帯モンスーンアジアの古環境変遷に関する国際シンポジウム」を開催し,本組織からは7件(総発表数17件)の研究発表を行った。 本研究では,次のことが明らかになった。気候に関して:北東部の降水量の変動が著しく大きい。冬の寒気の侵入が哀牢山によって妨げられる。エルニーニョと降水量の関係が明らかである。地形に関して:最終氷期の氷河平衡高度は,北西部の梅里雪山で海抜4800メートル,約300キロメートル南の大理付近にある蒼山で3300メートルである。南ほど,低高度であるのは,降水量の差異による。現在は,氷河は東向き斜面によく発達するが,氷期には西斜面にも同様に発達していた。麗江付近の調査により,これまで明らかになっていたソンコイ河谷に沿った断層(Red River Fault)の北の末端を明らかにした。土壌に関して:全域にわたって,赤色土から褐色森林土にわたる土壌の垂直分布を明らかにし,特に昆明の〓池周辺で,土壌と湖成段丘の関係から,土壌生成の時期を推定した。花粉分析に関して:今回の調査では,最も古い年代が約1万年であり,また花粉の同定が完了していないので,最終的な結果は出されていないが,4地点のデータについて,花粉帯を識別することができた。ことに,花粉の破損状況から,人類の森林破壊の歴史を推定する可能性がでてきた。植生に関して:植生に関しては,分布の環境となる降水量と気温の推定式を求めることができた。高山帯と,暖温帯林について,人類の影響による植生改変と,原植生の復元を行うことができた.
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