研究課題/領域番号 |
04041019
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大橋 広好 東北大学, 理学部, 教授 (80011617)
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研究分担者 |
謝 長冨 台湾大学, 理学院, 助教授
黄 増泉 台湾大学, 理学院, 教授
陳 家瑞 中国科学院, 植物研究所, 教授
呉 徳鄰 中国科学院, 華南植物研究, 副教授
遠藤 泰彦 千葉県立中央博物館, 学芸研究員 (30250145)
根本 智行 東北大学, 理学部, 助手 (50228293)
立石 庸一 琉球大学, 教育学部, 助教授 (80114544)
HSIEH Chang-fu National Taiwan University
HUANG Tseng-chieng National Taiwan University
朱 相雲 中国科学院, 植物研究所, 助手
陳 寿 中国科学院, 華南植物研究所, 助手
杉山 宗隆 東北大学, 理学部, 助手 (50202130)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
19,000千円 (直接経費: 19,000千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1992年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
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キーワード | マメ科 / Desmodieae / Euchresta / Chamaecrista / 中国 / 台湾 / 系統分類 / 分子系統 / 南中国要素 / 中国南部 / 比較形態学的研究 / 比較解剖学的研究 / 葉緑体DNA / 系統解析 |
研究概要 |
7月28日〜8月14日に中国広東省華南植物研究所、雲南省昆明植物研究所、北京市中国科学院植物研究所にてマメ科南中国要素のさく葉標本の調査をおこない、また、雲南省昆明市近郊で南中国要素植物の収集をおこない、乾燥標本約100点と液浸標本30点を作製した。 さらに、10月24日〜11月6日に、台湾および中国から2名づつ研究者を招聘し、東北大学にて国際シンポジウム「南東〜東アジアにおけるマメ科植物の分類と植物地理」を開催した。ここでは、平成4年度から行なわれてきた本研究の成果について内容を討議し、出版計画を立てた。 今年度までの入手した試・資料をもとに、本年度は、以下のような成果を得た。 1.分類学的研究 雲南省および四川省におけるソラマメ亜科のミヤマトベラ連とヌスビトハギ連の種とそれらの分布が明らかになった。ミヤマトベラ属とヌスビトハギ属では新しい種がみつかった。 ジャケツイバラ亜科のカワラケツメイ属の従来の分類を再検討し、種の新しい区別点をみつけ、各種の輪郭を明確にした。この結果、台湾と南中国に新種を認め、さらに、アジアに広く分布するとされてきたカワラケツメイは揚子江流域を境に北方のものと南方のものの2つの亜種に区別できること、また、タイワンカワラケツメイの異名とされてきた種が独立した別種であることが判明した。 ソラマメ亜科インゲンマメ連のホドイモ属について分類学的再検討をおこなった。アジアに5種をみとめた。台湾にはこれまで1種しか知られていなかったが、あらたにもう1種を認めた。これらの分布から、台湾と中国南部の種との系統関係が明らかになった。 2.比較形態学的研究 液浸標本にもとづいて、ヌスビトハギ連の属間で花序の形態を器官学的および発生学的な観点から比較した。この連ではこれまで総状花序と偽総状花序が知られていた。偽総状花序の部分花序で花が背軸側に偏って配列するという特殊性をもち、同様の配列が総状花序においてもみられることがわかり、総状花序は偽総状花序の部分花序と相同であると判明した。総状花序が原始的な形質を多く持つ属でみられることから、偽総状花序は総状花序をだく葉がりん片葉に退化することにより進化したものと推定できた。また、これまで総状花序とされてきたハナハギ属の花序は偽総状花序の構造をもつことが判明した。 3.分子系統学的研究 DNAの分子系統学的解析をヌスビトハギ連について行なった。rbcL遺伝子の塩基配列の比較の結果、原始的な形態形質をより多くもつDendrolobium属、Phyllodium属、Tadehagi属およびヌスビトハギ属のミソナオシ亜属が単系統群をつくることがわかった。また、葉緑DNARELPs解析の結果、ヌスビトハギ連のヌスビトハギ属ヌスビトハギ亜属は単系統群であること、Dollinera亜属が姉妹群であること、ヌスビトハギDesmodium podocarpumには異なる葉緑体DNAタイプをもつ3グループが認められ、それらは形態に基づく4つの種内分類群と一致しないことを明らかにした。 4.植物地理学的研究 台湾、琉球および日本本土のマメ科植物の分布について次の点が明らかになった。台湾に産するマメ科植物は58属165種であり、そのうち約49%が琉球、日本と共通している。琉球に産するものは43属73種であり、このうち約56%が台湾と共通し、さらに、日本本土のものは38属94種であり、このうち51%が琉球、台湾と共通していることがわかった。このことから、マメ科植物の分布において台湾、琉球および日本本土は密接な関連をもつことが示された。 一方、中国南部(広東省、広西省、海南省)には92属424種のマメ科植物が分布しており、このうち約80%は熱帯のもので、温帯性のものはわずか約20%であった。また、約95%は熱帯アジアに分布するもの(240種)と中国固有種(162種)で占められており、中国固有の種162種のうち65種(約40%)は中国南部に分布が限られていることがわかった。 5.地史学的研究 台湾での花粉分析の結果、マメ科植物相の地史的な発達過程が明らかになってきた。マメ科の中で最も原始的と考えられているジャケツイバラ亜科植物の花粉が新生代第3紀中新世から出現し、より進化していると考えられているソラマメ亜科植物はそれより後の鮮新世や、そ、さらに後の第4紀更新世から出現することがあきらかになった。
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