研究分担者 |
KAMAR V.Nand ペラデニヤ大学, 地理学科, 上級講師
BANDARA C.M. ペラデニヤ大学, 地理学科, 教授
中川 清隆 上越教育大学, 学校教育部, 助教授 (70115252)
枝川 尚資 朝日大学, 教養部, 教授 (20027270)
青木 正敏 東京農工大学, 農学部, 助教授 (60081569)
嶋田 純 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (80206169)
田瀬 則雄 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (40133011)
田中 正 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (50015880)
NANDAKUMAR v. Department of Geography, University of Peradeniya
CHANDRA S. インド水文研究所, 所長
V.NANDA Kuma ペラデニア大学, 地理学科, 上級講師
C.M.MADDUMA バンダーラ ペラデニア大学, 地理学科, 教授
C M Maddwna ペラデニア大学, 地理学科, 教授
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配分額 *注記 |
24,000千円 (直接経費: 24,000千円)
1994年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
1993年度: 8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1992年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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研究概要 |
本研究の目的は、(スリ)ランカ島における、(1)地域水循環変化の地球気候変化へのスケール・アップ、(2)環境同位体による地域水循環機構の解明、(3)土地利用(植生)変化が水循環変化に及ぼす影響の解明の3つである。 (1)については、100年以上の記録をもつ16地点の気象観測データをデータベース化して、気候の長期変化について解析を行った。またランカ島の気候変化の境界条件となっている海面水温の長期変化を明らかにする目的で、イギリス気象局作成の海面水温データベース(UKMO/SST)を用いて、全海洋の60年間(1930-1989)の海面水温(SST)変化のトレンド解析を行った。その結果全海洋のSSTの上昇率は約0.9℃/100yであるのに、インド洋のSSTの上昇率は1〜2℃/100yと異常に大きいことが明らかになった。一方島の南西海岸に位置するゴールの地上気温の上昇率はSSTの上昇率をいずれの月も下回り、地上気温の温暖化の原因が海洋にあることが判明した。しかしながら、ヌワラエリヤ(標高1895m)の1-3月の地上気温の上昇率は2〜4℃/100yで、SSTのそれをはるかに上回っていた。コロンボのラジオゾンデのデータによる自由大気の解析、及び北インド洋周辺の大気循環場の解析によって、この異常昇温の原因は下降気流の強化によることが明らかになった。次に雨量の長期変化を解析し、南西モンスーン季には、過去1世紀で南西低地部で雨量の顕著な増加が、また南西山地部では顕著な減少が起きていることが明らかになった。ドライゾーンの低地部でも雨量は減少傾向を示した。雨量の減少が最も著しかったヌワラエリヤの年雨量は、約2500mmから約2000mmへと20%も減少していた。雨量の増加が最も大きかったのはコロンボ西方海域で、そこでも10-20%程度の増加があったと推定された。ランカ島と比較するために、南インドのニルギリ山地でも予備的調査を行ったが、ここでは過去1世紀の雨量は、海岸のカリカットではほぼ線形の上昇傾向を、ウ-タカムンド(2254m)でも数十年の周期変動はあるが同じく上昇傾向を示したが、減少傾向を示す地点も見られた。まとめとして、地球温暖化の影響によるSSTの上昇はインド洋ではすでに1世紀前から起きていたと推察され、その影響でインドモンスーンとかかわる水・エネルギー循環が強化され、ランカ島の水循環が著しく変化したと結論できる。 (2)については入力としての月雨量を10地点で1年間採取し、酸素及び水素同位体比の分析を行い、高度効果と内陸効果の存在を確認した。また河川水中に占める地下水成分を分離する目的で、気候・水文条件の異なるKelani,Dedula,Mahaweliの3河川の河川水を採取し、トリチウム分析を行った。その結果、乾季の河川水のトリチウム濃度には1〜3TUの範囲で地域差が認められ、低地部では滞留時間の長い地下水の寄与が、また中流部では相対的に滞留時間の短い水の寄与のあることが判明した。雨季の水については現在分析中である。地下水については、ドライゾーン、中間ゾーン、ウエットゾーンから代表的な小流域を6流域選定し、約140の井戸から地下水を採取し、水質及び環境同位体の分析を行った。その目的は地下水の涵養・流動・流出に伴う水質形成機構の解明である。その結果、ウエットゾーンでは地中を流動する過程での岩石-水相互作用が、またドライゾーンでは岩石-水相互作用のほかに、蒸発による濃縮作用が重要であることが明らかになった。水質及び同位体による水循環機構の解明がすべて終了するまでには、あと1年が必要である。 (3)の中心課題は、気象と植生条件の違いによる蒸発散量の評価と、植生(または土地利用)の変化に伴う水循環変化の予測である。前者については、熱収支ボ-エン比法によって、異なる気象・植生条件のもとで野外観測を実施し、日蒸発散量を気温、相対湿度、被覆率、土壌水分の関数として推定できる関係式を開発した。後者については、島最大の河川であるMahaweli川上流部における植生変化と河川流量の長期変化を解析し、山地部においては雨量が長期減少傾向を示したにもかかわらず、湿潤月の流量は増加傾向を示し、この一見相矛盾する変化傾向が、茶畑の畑地や宅地への転換によることを突き止めた。湿潤熱帯の森林からの年蒸発散量は1600mmにも達し、森林伐採による蒸発散量の減少、すなわち河川流出量の増加が顕著である。ただし森林の伐採は水資源量は増すが、土壌流亡を加速するので、土地利用変化と河川の浮流物質濃度との関係についても調査した。
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