研究概要 |
1.調査の背景 本調査は,平成3年度科学研究費補助金(国際学術研究)を受けて実施された「欧米諸国における地域研究の実態調査」を,実質的に継承し,国立民族学博物館を実施機関として調査が進められている「総合的な地域研究に関する機関調査」と密接に関連しておこなわれた。 2.調査の目的 わが国における新しい「地域研究」のための機関に関して,欧米諸国の「地域研究」の現状を把握することを目的として,平成3年度のアメリカ合衆国の調査に引き続いて,本年度は,ドイツ,フランス,イギリスの調査をおこなった。 3.現地調査の準備 現地調査に先んじて,上記3国における「地域研究」の現状に関して事前サーヴェイをおこない,派遣者を中心に,集中的討議をおこなった。また,実施上の重点目標の確定及び調査項目の調整をおこなった後,現地調査の対象となる研究機関を選定し,それとの連絡体制を確立し,手紙などによる事前協議を行って,現地調査の具体化をすすめた。 3.現地調査の概要 1)現地調査の派遣者と派遣期間・派遣国 研究代表者 後藤明(東京大学教授) 平成4年11月18日〜29日(フランス,イギリス) 研究分担者 板垣雄三(東京大学名誉教授) 平成4年11月10日〜27日(ドイツ,フランス,イギリス) 研究協力者 羽田正(東京大学助教授) 平成4年11月8日〜22日(ドイツ,フランス) 研究協力者 高橋和夫(放送大学助教授) 平成4年11月8日〜25日(ドイツ,フランス,イギリス) 2)おもな訪問機関 ドイツ (1)ベルリン自由大学東欧研究所 (2)ベルリン自由大学ラテンアメリカ研究所 (3)ベルリン自由大学JFK北米研究所 (4)ミュンヘン大学近東歴史・文化・トルコ学研究所 (5)ドイツ都市研究所(ベルリン) (6)連邦地域地理学・地域計画研究所 他5機関 フランス (1)CNRS本部(2)インド・東南アジア研究センター(パリ) (3)トゥールーズ大学ラテンアメリカ研究所 (4)パリ第3大学東洋・アラブ世界研究所 (5)社会科学高等研究院アフリカ研究所(パリ) (6)現代アラブ・ムスリム研究所(エクサン・プロヴァンス) 他4機関 イギリス (1)ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院 (2)ロンドン大学スラブ・東欧研究所 (3)ロンドン大学ラテンアメリカ研究所 (4)ケンブリッジ大学国際関係研究センター (5)ケンデリッジ大学南アジア研究センター (6)オックスフォード大学イスラム研究センター 他3機関 3.調査結果及び収集された史料に基づく研究作業 調査は,各研究機関の責任者もしくは主要な研究スタッフと面談し,現状を聞き取り調査すると同時に,現在わが国が進めている国立の「地域研究機関」の概要を説明して,それに関するアドヴァイスを求める,というかたちでの「地域研究」に関する議論をおこなった。また,それぞれの機関の出版物を収集いたことはいうまでもない。 調査した各国の特色を一口でいえば以下である。ドイツでは「開発」のための「地域」研究,すなわちリージョナル・サイエンスが中心で,エリア・スタディーズは,ベルリン自由大学の研究所をのぞいて,なされていない。フランスでは,政府機関であるCNRSが地域研究の手法を取り入れることに熱心であるが,それは,研究プロジェクトを中心に研究者を組織して,研究機関の充実を必ずしも目指してはいない。イギリスでは,それぞれの有力大学がいくつもの「地域研究センター」を組織しているが,それらは教育に重点があって,研究中心ではない。 現地調査終了後,収集した情報を整理して,調査参加者4人による集中的討議を行った。それらはいずれ,報告書の形で公刊する予定である。また,収集した文献は,それぞれにふさわしい機関に所蔵し,今後の研究に供する手続きをとった。 今後は,韓国などの東・東南アジア諸国,中東諸国などにおける「地域研究」の現状についての調査を継続する予定である。
|