研究分担者 |
MOORE K. トロント大学, 物理学部, 教授
GYAKUM J. マギル大学, 気象学部, 教授
高橋 劭 九州大学, 理学部, 教授 (20197742)
PELTIER D. トロント大学, 物理学部, 教授
山下 晃 大阪教育大学, 地学教室, 教授 (60011574)
小西 啓之 大阪教育大学, 地学教室, 助手 (70178292)
鳥谷 均 農林水産省, 農業環境技術研究所, 主任研究官
大和 政彦 群馬大学, 教育学部, 講師 (60212289)
KING P. カナダ気象局, 研究官
STEWART R. カナダ気象局, 研究官
田中 浩 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (00115594)
和田 誠 国立極地研究所, 助手 (40132716)
坪木 和久 東京大学, 海洋研究所, 助手 (90222140)
小倉 義光 日本気象協会, 顧問
力石 國男 弘前大学, 理学部, 助教授 (70038561)
遠藤 辰雄 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (20001844)
遊馬 芳雄 北海道大学, 理学部, 講師 (10183732)
菊地 勝弘 北海道大学, 理学部, 教授 (80000793)
中村 晃三 東京大学, 海洋研究所, 助手 (20143547)
浅井 冨雄 広島大学, 総合科学部, 教授 (80025288)
MOORE Kent University of Toronto, Department of Physics
JYAKAM Jon University of Montreal, Department of Physics
KENT Moore トロント大学, 物理学部, 教授
JOHN Gyakum マギル大学, 気象学部, 教授
DICK Peltier トロント大学, 物理学部, 教授
坂本 充 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (30022536)
RON Stewart カナダ気象局, 研究官
PAT King カナダ気象局, 研究官
神沢 博 国立極地研究所, 助手 (20150047)
|
配分額 *注記 |
40,000千円 (直接経費: 40,000千円)
1994年度: 13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
1993年度: 15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
1992年度: 12,000千円 (直接経費: 12,000千円)
|
研究概要 |
本年度の研究において、1994年1月中旬から2月中旬にかけて北極圏のカナダ、ノースウエスト準州ケンブリッジベイにおいて行なったエネルギー収支の観測の解析を行った。次に、カナダ大気環境局(Atmospheric Environmental Service)で観測しているカナダ国内すべての高層気象データを用いて熱収支解析をおこなった。また、1994年9月初旬から10月中旬にかけて北極海のビューホ-ト(Beaufort)海周辺で極域ストームを航空機やレーダー、衛星等を使った大規模な観測プロジェクトBASE(Beaufort and Arctic Storms Experiment)が遂行された。期間中ビューホ-ト海に面したタクトヤクタックに北大理学部の編波ドップラーレーダーを設置しデータを取得した。 以下に本年度の研究より得られた具体的な結果をまとめる。 1.地上鉛直温勾配、地上気温、高度20m,40m,66mの気温の7ヶ月間の記録から気温勾配が負になる接地逆転が純粋な放射冷却によるものと寒気移流の後に暖気移流に切り替わった時に見られるみかけの接地逆転による場合に分類された。これらの1連の寒冷化のイベントが前者と後者の場合、それらが寒気のsourceとsinkに相当すると考えられるので、このことから観測された2地点のCambridge BayとResoluteの記録を比べると、Cambridge Bayのほうが放射冷却の起こっている割合がResoluteに比べて多く、前者が寒気のsourceで後者がsinkであることが相対的に卓越している事が分かった。事実Cambridge Bayのほうが最低気温域により近いこととよく符合している。 2.冬季の寒気形成時における、カナダ北極圏における地表面付近の風と気温の変動の統計的な特徴と、大気・地表面間の運動量と熱の輸送を明らかにするために、カナダ北西準州、ケンブリッジ・ベイ(北緯69.3°、西経105.0°)にある高層気象台内の雪原で、1994年1月23日〜2月6日の15日間にわたって観測を行った。用いた測器は超音波風速温度計(WAT-395)であり、これによって得られた水平方向2成分、鉛直方向1成分の風速と気温の値を、時間間隔1〜10Hzでサンプリングし、ディジタル・レコーダー(DR-F1)に収録した。解析では、スペクトル解析、ウエーブレット解析を用いて風と気温の変動の統計的な特徴を、渦相関法によって運動量と熱の輸送量を明らかにした。 3.1994年に冬季約1ヵ月間、カナダ北極圏Cambridge Bayにおいて降雪及び氷晶霧の観測を行った。雪結晶は、極く薄い雲中で成長し下層の(相対湿度の高い)寒冷な気層中に落下してくるため、成長形を保っている見事な外形のものばかりで、-25℃以下においても低過飽和度もとでは六角板状の単結晶雪が成長すること定温型雪結晶のハビットもかなり細分し示すべきものであること等が判った。また、氷晶霧発生時には成長中の氷晶が観測され、氷晶霧には約9〜18個の結晶面が見られる多面体結晶がかなりの高率で観測されるものと、細長い柱状結晶が20%程度観測されるものとがあった。氷晶霧中の微水滴凍結実験でも興味深い結果を得た。 ヤマセは夏季に北西太平洋から北日本に吹き込む冷たい北東気流であり、オホーツク海高気圧と日本列島南方の低圧帯の気圧差によって駆動されている。ヤマセの発生機構について、高層気象の客観解析データ、北極圏の海氷分布データなどを解析して詳細に調べた。ヤマセの寒気の源は、北極海からベーリング海峡を通って太平洋へ流れ出る北極気団であることが明らかになった。地表でヤマセが吹くとき、500hPa面高度では偏西風が波数3の循環を示し、オホーツク海周辺の極東域では偏西風の分流・ブロッキングが発生している。ヤマセの原因である3波数循環と偏西風の分流・ブロッキングは、極気団の中心がバレンツ海周辺にあり、バレンツ海周辺の海氷例年より広く分布している場合に発生していることが判明した。また、大冷害をもたらす持続性の強いヤマセは、偏西風がヨーロッパ周辺から二本の流れ(亜熱帯ジェット、亜寒帯ジェット)に分かれ、その間に持続性の短いブロッキングが次々に生じることによって維持されていることが明らかとなった。
|