研究分担者 |
NAIR K.K.K. インド地質調査所, デカン高原研究部, 主任研究員
CHATTERJEE A インド地質調査所, デカン高原研究部, 研究員
YEDEKAR D.B. インド地質調査所, デカン高原研究部, 主任研究員
DESHMUKH S.S インド地質調査所, デカン高原研究部, 統括部長
山下 茂 岡山大学, 地球内部研究センター, 助手
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 助手 (70222354)
金子 隆之 東京大学, 地震研究所, 助手 (90221887)
海野 進 静岡大学, 理学部, 助教授 (30192511)
小沢 一仁 東京大学大学院, 理学系研究科, 助教授 (90160853)
荒牧 重雄 北海道大学, 理学部, 教授 (60012895)
浜野 洋三 東京大学大学院, 理学系研究科, 教授 (90011709)
兼岡 一郎 東京大学, 地震研究所, 教授 (30011745)
YEDEKAR D B インド地質調査所, デカン研究部, 主任研究官
DESHMUKH S S インド地質調査所, デカン研究部, 部長
|
研究概要 |
本研究期間内に現地調査を3度行なった.第1回目は1993年1月に,マハラシュトラ州の洪水玄武岩の分布域をほぼ横断する約1000kmのルートで,地質調査,試料採取を行なった.第2回目は1993年9月から10月にかけて,洪水玄武岩およびキンバーライト中に含まれるマントル捕獲岩および捕獲結晶の採取を目的として,マデラプラディーシュ州,グジャラート州の産地の調査を行なった.第3回目の現地調査は1993年12月から1994年1月にかけて,洪水玄武岩のフィーダーと考えられる岩脈群の調査をマハラシュトラ州西部,グジャラート州南部で行なった.この間の現地調査で明らかになった点は以下のようなものである. これまでの研究では西ガ-ツ山脈の噴出中心から数百km離れた地点とされていたブルダナ地域で,噴出口近傍の堆積物と考えられる火山弾等の溶結物を発見し,デカン洪水玄武岩の噴出口が西ガ-ツ山脈に限らないことが明らかになった.また,洪水玄武岩の分布東限に近いアホール地域でも噴出時に空中に飛散し,急冷したものが堆積,溶結したガラス質の溶岩が存在することが判明し,洪水玄武岩の噴出口は少なくとも数箇所以上,しかも広い範囲にわたって存在した可能性があることがわかった.これらの噴出時期については現在放射年代の測定準備を行なっているが,地質学的には他の洪水玄武岩と同時代と考えられるので,洪水玄武岩の噴出機構に関するこれまでの常識を覆すことになる. マデラプラディーシュ州のパンナ地域でのキンバーライト調査の際に,洪水玄武岩と同質の玄武岩溶岩流が分布していることを確認した.これらの噴出時期を確定するために,放射年代測定の準備を行なっている段階であるが,他の洪水玄武岩類と同時代であるとすると,デカン洪水玄武岩の分布北限はこれまで考えられていたよりも100km以上北になる.また,グジャラート州のアルカリ玄武岩溶岩中にスピネルレールゾライトの捕獲岩を多数発見し,採取を行なった.カンラン石の一部は変質しているものの鉱物分析を行なうには十分新鮮であり,これらアルカリ玄武岩の活動時期は洪水玄武岩に一致しているので,デカン洪水玄武岩の活動時期におけるマントルの組成,温度条件について貴重なデータが得られるはずである. ナルマダ川下流域の岩脈群の調査では,東西性の岩脈と南北性の岩脈が相互に切り会い関係にあることが判明し,デカン洪水玄武岩の活動時期に2方向の割れ目系が存在していたことが明かになった.今後,これらの間に化学的特徴で差が存在するかどうかを明かにすることが重要である.また,これまでガブロ質の貫入岩体とされた部分を精査した結果,明瞭な細粒玄武岩質の急冷周縁相が確認され,本来,玄武岩マグマの貫入岩体であるが,冷却期間が長かったため粗粒岩相になったことが判明した.現在,これらの岩体の粒度解析から冷却過程を明かにする研究を進行中である. 1993年10月までの現地調査で採取した試料についてはすでに蛍光X線分析による主成分分析を完了し,かなりの部分については微量成分分析も行なっている.これらの解析から,デカン洪水玄武岩の内,Mgに富むものはカンラン石斑晶が集積したものであり,噴出時の液の組成を代表するものはMgOが7%にすぎないことが判明している.これまで,デカン洪水玄武岩はピクライト質の本源マグマが結晶分化することにより生じたと考えられてきたが,この点は誤りであることが明白になった.また,調査と平行して行った高圧実験の結果との比較から,最もMgに富む液の組成はMORBが高圧下で部分溶融する際に生じる液と類似していることも判明している.また,デカン洪水玄武岩にみられる化学組成のトレンドも単純な結晶分化作用では説明できず,少なくともK,Tiの量に関して異なる,数種類の玄武岩質親マグマを考える必要があることがわかっている.このような,親マグマの化学組成が活動年代とどのような関係があるかは興味ある点であるが,放射年代の測定が完了しておらず,今後の課題である.
|