研究課題/領域番号 |
04041033
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾本 恵市 東京大学, 理学部, 教授 (10011503)
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研究分担者 |
DASHNYAM Bum モンゴル科学院, バイオテクノロジー研究所・バイオテクノロジー部門, 部長
BATSSUR Jamy (モンゴル)国立人類学センター, 所長
斎藤 成也 国立遺伝学研究所, 進化遺伝部門, 助教授 (30192587)
杉田 繁夫 JRA競争馬総合研究所, 栃木支所, 疫学研究員
根路銘 国昭 国立予防衛生研究所, ウィルスリケッチア部, 室長 (00072934)
石田 貴文 東京大学, 理学部, 助手 (20184533)
平井 百樹 東京大学, 理学部, 教授 (60156635)
BATSUUR Jamyangiin Head, The National Center of Anthropology
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研究期間 (年度) |
1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1992年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | モンゴル人 / 集団遺伝学 / 人類学 / 血液型 / ウィルス疫学 / 遺伝的多型 / ウマ / ミトコンドリアDNA |
研究概要 |
本研究は、モンゴル人の血液内遺伝標識(血液型、タンパク型、DNA型)を検査し、日本人を含むアジアの近隣諸集団との遺伝的近縁性を明らかにすること、またヒトおよび家畜(ウマなど)のウィルスの疫学的検査を行うことを目的とする。 (1)ヒト血液については、ウランバートル市の郊外でハルハ族173名、ブリアート族21名より採血し、現地で血球、血清およびDNA採取用のバフィー・コートに分離し、それぞれを日本に持ち帰った。帰国後、直ちにDNAを精製分離した。 (2)血液型については、ABO、MNSs、Rh、ケル、P、キッド、ダフィー、ルイスの8種類について検査した。モンゴル人の主体をなすハルハ族の血液型遺伝子分布は、朝鮮人と比べて日本人との相違が大きいことがわかった。なお、赤血球酵素および血清タンパクの遺伝的多型の検査を現在進めているが、それらの結果が出たところで遺伝距離およびクラスター分析による近隣集団との系統的関係の推定を行う予定である。 (3)血清試料につきウィルスの疫学的調査を行った。T細胞指向性レトロウィルス(HTLV)に関しては、過去3年間に集められた試料も利用することができ、最終的にモンゴルの11民族2000名についての検査結果が得られたが、HTLV陽性者は皆無であった。このことは、HTLVが日本のアイヌや沖縄人のようないわゆる古モンゴロイド系の集団に見られるのに対し、中国人などの新モンゴロイド系集団には見られないとの考えを支持する。B型肝炎ウィルス(HBV)の感染率は10%であるが、C型肝炎ウィルス(HCV)の分布を調べたところ40%という高い値を示した。これは、モンゴルにおける肝炎の高い発症率、さらには肝癌の高い発症率と関係があると考えられる。 (4)ハルハ族136名のDNA試料によりミトコンドリアDNAについて検査し、次の結果を得た。まず、制限酵素HincIIによる切断パターンについては、3種類の型が見られたが、最も多い型は2型と呼ばれるもので73.2%(日本人では87.7%)であった。日本人には見られない6型が21.4%という高い頻度で見られたことは興味深い。この型は従来アメリカ・インディアンで発見されていたものである。ついで、アジア人に特異的な9塩基対の欠失の頻度を調べたところ、5.9%であった。この値は日本人(本州)や中国人での約16%に対してかなり低い。このほか、極めて珍しい塩基の挿入をもつ個体が3名(2.2%)発見された。現在、他の制限酵素を用いた研究を進めている。また、核のDNAについては、ヒトY染色体特異的DNAフラグメントにおける多型の研究にもとりかかっている。 (5)モンゴル各地の遺跡より発掘された新石器時代一歴史時代の人骨試料(各0.2-0.4g)18個を得た。このうち、すでに8試料からはPCR用DNAを抽出した。古人骨からのDNAの研究に利用するべく準備中である。 (6)モンゴル人における成人ラクターゼの存在を調べた。成人ラクターゼは日本人や中国人では存在しないが、ヨーロッパ人では高い頻度で存在する。これは、牧畜民では乳糖の摂取という条件下で変異遺伝子が自然淘汰により増え、ラクターゼをもつ成人が高い頻度に達したものといわれる。今回、ウランバートル市で成人20名を対象に乳糖負加試験を実施したところ、1名がラクターゼを有していた。これは、モンゴロイドとしては高い頻度である。 (7)ウマ150頭、ラクダ30頭より血液試料を得た。ウマのインフルエンザ・ウィルス(A/eg/Miami/1/63およびA/eg/Prague/1/56)の抗体検査の結果はすべて陰性であった。また1989-1990年に中国北部でトリインフルエンザウィルスによるウマのインフルエンザが流行したが、このウィルスに対する抗体の検査もすべて陰性であった。さらに、ウマの試料については、タンパク型やDNA型の検査により日本の在来馬との関係を調査する予定で準備を進めている。
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