研究分担者 |
李 朝達 中国科学院, 昆明動物研究所, 副教授
粛 寧年 中国科学院, 昆明動物研究所, 助教授
趙 立単 中国科学院, 上海昆虫研究所, 助理
張 はん雲 中国科学院, 昆明分院, 副教授
胡 聖豪 中国科学院, 上海昆虫研究所, 助理
謝 栄棟 中国科学院, 上海昆虫研究所, 助教授
尹 文英 中国科学院, 上海昆虫研究所, 教授
渡辺 泰明 東京農業大学, 国立科学博物館, 教授 客員研究員 (70078096)
田村 浩志 茨城大学, 理学部, 教授 (20007561)
加納 六郎 (加納 六朗) 東京医科歯科大学国立科学博物館, 名誉教授 客員研究員 (10013773)
上野 俊一 国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (00000109)
伊藤 良作 昭和大学, 教養部, 助教授 (80133354)
石井 清 独協医科大学, 医学部, 助手 (90049247)
青木 淳一 横浜国立大学, 環境科学研究センター, 教授 (00092635)
HU Sheng-hao Ibid., Assistant Researcher
XIE Rong-dong Ibid., Assistant Professor
YIN Wen-ying Academia Sinica, Shanghai Institute of Entomology, Professor
ZHANG Hun-yun Academia Sinica, Kunming Brach, Associate Professor
XIAO Ning-nian Ibid.Assiatant Professor
ZHAO Li-jun Ibid., Assistant Researcher
蕭 寧年 中国科学院, 昆明動物研究所, 助教授
張 漢雲 中国科学院, 昆明分院, 副所長
趙 立軍 中国科学院, 上海昆虫研究所, 助理
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研究概要 |
陸上の生態系の平衡を維持するうえに,土壌動物は菌類・原生生物とともに植物の生存の基盤をなす重要な共生者である。したがって土壌動物についての基礎情報の整備は,農業・林業はもちろん,地球・人類の生存・存続に直接かかわる要請であり,環境問題の解明に必須の情報である。自然の荒廃がいちじるしいアジアのなかでも,とくに中国では過去の経緯から自然林が重大な危機に瀕している。本研究は平成元〜三年の国際学術研究"中国の亜熱帯林における土壌動物相の研究(課題番号01041032)"のおとを継承するもので,主たる調査地を浙江省から雲南省に移したが,研究内容は一連共通の目的のもとにすすめられた。われわれの日中共同研究がきわめて円滑に進行したのは,野外調査の企画・推進・実行,えられた学術資料の取扱い,研究成果の発表方法などについて,前回の学術調査発足時の平成元年四月に日中で十分に討議しそれぞれの項目について円満なる合意をえて成立した協定を日中相方が遵守してきたからである。 平成四年四月,本研究の実施に先立ち,謝栄棟氏ほか四氏によって西双版納昆明,大理,景束,麗江などでの予備調査がおこなわれ,九月には尹文英氏と今立が昆明,西双版納などを歴訪して,平成四年・五年の調査地と日程の大綱をさだめた。日中の研究者が雲南省に入ったのは平成四年一〇月,翌一一月へかけて西双版納熱帯植物園とその周辺の熱帯(雨)林と,昆明郊外の西山周辺の常緑広葉樹林などの一〇地点で、ツルブレン法・拾取り法・直接法などを併用して土壌動物の調査をおこなって,大量の標本・資料をうることができた。 平成五年一月,採集資料の系統分類学上の位置の研究のため,粛寧年氏が東京農業大学の渡辺泰明氏の研究室に,七月には張はん雲氏が東京医科歯科大学を訪れ,加納六郎氏や今立等と研究をふかめ,またこれからの調査研究計画についての検討をおこなった。 平成五年八〜九月の野外調査は雲南省賓川老太山,大理点蒼山系玉竹峯,中和寺,寂照庵周辺などの常緑広葉樹林(照葉樹林)と,前年と同じ西双版納熱帯植物園周辺の熱帯(雨)林などの合計一六地点で,ツルブレン法・拾取り法・直接法などを併用して,土壌動物相を調査し,悪天候に悩まされたにもかかわらず,おおくの興味ある標本・資料をうることができた。 平成五年一一〜一二月,謝栄棟氏,張駿氏(研究協力者)は無髄昆虫類の分類学的研究のため訪日して,東京医科歯科大学・茨城大学理学部などで研究をすすめた。 尹文英氏と二人の中国人研究者は,平成六年一〇月に昭和大学でひらかれたこの共同研究の総括集会に,日本側の全研究者とともに参加された。それまでの各研究者の成果はめざましいものがあり,多数の新種,中国新記緑種がえられ,中国における土壌動物相の基礎情報が飛躍的に増大したことがあきらかとなった。たとえばササラダニ類にあっては,中国からの既知種116種から271種に増加し,うち16種は新種であった。またカマアシムシ類では,雲南省からの既知30種が53種にふえ,うち14種が新種であった。注目すべき発見としては,鞘廻類の12新種のうち,チビゴミムシ類の新種はこの原列のヒマラヤから日本列島にひろがる種属のなかの統計進化上の原型ともみなうべきものが,大理点蒼山系でえられ,新属Junnamotrechusが創設されたとがあげられる。 平成六年一二月,石井清氏と伊藤良作氏は中国側研究者とともに,この共同研究をつうじてえられた重要標本・記録・資料類を整理し,中国科学院上海昆虫研究所の収集学術資料のなかに加えた。またこの一連の研究によって,中国で最初の土壌動物等の大著"中国亜熱帯土壌動物(尹文英編)"が刊行され,中国における土壌動物学研究に強力なる基盤がつくられた。この大著(618頁)の過半は本研究に参加した研究者の執筆にかかる。 以上の結果から,将来のこの共同研究がめざましく卓越した成果をもたらすであろうことは疑のないところである。
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