研究課題/領域番号 |
04041050
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
末原 達郎 富山大学, 人文学部, 助教授 (00179102)
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研究分担者 |
MLAMBITI M. ソコイネ農科大学, 農学部, 教授
杉村 和彦 福井県立大学, 経済学部, 講師 (40211982)
池上 甲一 近畿大学, 農学部, 助教授 (90176082)
赤阪 賢 富山大学, 人文学部, 教授 (60099231)
祖田 修 京都大学, 農学部, 教授 (40081111)
M Mlanbiti ソコイネ農科大学, 農学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
18,500千円 (直接経費: 18,500千円)
1994年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1993年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1992年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | 食糧生産 / アフリカ / 社会変容 / タンザニア / 市場経済 / 土地制度 / 構造調整 / ファーミングショステム / ペザント・スタディーズ / マリ / 社会変動 / 市場の自由化 / 農産物市場 / 自給用作物 / サバンナ / 山地林 / 森林保護 |
研究概要 |
本研究は、赤道アフリカ地域における食糧生産を、ファーミングシステムの側面と社会経済的側面から比較研究することを目的として計画されたものである。研究の対象は、当初、ザイール共和国とタンザニア共和国の2か国を想定しており、ザイールは森林地帯における食糧生産の例として、タンザニアはサバンナ地帯における食糧生産の例として調査を行なう予定でいた。しかし、1991年にザイールの政治的情勢が悪化し、ク-デタ-事件が発生し、外国人の国外退去が行なわれた。その後も、政治状況は好転せず、日本では外務省によるザイールへの渡航禁止措置が行われており、ザイールでの研究の継続は事実上不可能になった。このため、研究対象の重点をタンザニア一国に置くと同時に、西アフリカとの比較のために、急遽マリ共和国を研究対象国に加えた。 タンザニアにおいては、この食糧生産と社会経済的背景に関する比較研究は、特に大きな成果を生んだ。1980年代末からタンザニアは構造調整政策を導入し、市場開放政策を取ってきている。これは、それまでのタンザニアの歩んできた独自の社会主義経済政策からは、大きく異なる政策であった。農業生産と農民経済もまた、この5年間に大きく変化をとげた。タンザニアの農業生産の中心となっていた協同組合は、事実上大幅に役割を減少させ、それにかわって、農民自身の中から企業者的農業経営者や農産物トレイダーが出現してきている。また、協同組合による土地保有制度にも変化の兆しが生じてきている。農地の共有制度はくずれ、農地の私有化が拡大し、土地の売買による農地の所有権の移動も頻繁に起きてきている。農民自身も、こうした市場経済の影響を強く受け、都市消費者向けの野菜栽培をおこなったり、農薬や肥料を多量に利用した農業を行ない始めている。一方で、気候条件や土地条件の悪いところでは、ここ数年、干ばつや虫害、作物の病気による被害が増え、食糧生産が極端に落ち込み、自給用の食糧すら確保できない地域も存在している。本研究では、近年タンザニアで起こりつつあるこうした急激な変化の波に、農民社会がいかに対応し、いかなる食糧生産の変動があったかを的確に調査し、研究することができた。以下、具体例に沿って明らかにする。 研究協力者のマサウエは、モロゴロ周辺地域で見られる農村金融に関して、農民の行動が市場経済に対応するようになっているにもかかわらず、それにみあう農民に対する融資制度が公的金融機関によって整備されておらず、農民金融は伝統的な信用制度に依存していることが示された。また、研究代表者の末原は、モロゴロ西方の乾燥サバンナ地帯における農耕民カグル-の食糧生産とそれに対する市場経済の影響を分析して、農業が伝統的な社会制度を越えて、新しい世代による本来の故郷地から遠く離れた土地での、新しい土地の獲得へと動いていることを示し、市場原理に基づいた土地私有制度の出現をあきかにした。研究分担者の祖田は、モロゴロ南方の湿地帯における大規模な稲作農業を分析し、タンザニアにおける伝統的稲作社会のしくみとその変容をあきらかにした。研究分担者の杉村は、モロゴロ南西部の農耕民サガラの農業に見られる混作農業に着目し、乾燥地帯の混作農業のもつ合理性と、混住社会の変容をあきかにした。研究分担者の池上は、モシ周辺のキリマンジャロ山麓において、伝統的農牧林複合社会のファーミングシステムと、日本の援助によって導入された近代的灌漑農業社会との、相互関係および地域内農民間格差についてあきらかにした。研究協力者の黒田は、イリンガ東部の山岳地帯に見られる、集約的農業の先進地帯において、果実栽培や野菜栽培と組み合わせたトウモロコシ栽培農業を分析し、農村内における農産物トレイダーの出現過程とその活動の実態をあきらかにした。研究分担者の赤阪は、マリにおける首都への急激な人口流入にともない、都市周辺農村が主食用作物の栽培から野菜作生産へと変わる過程を、自発的農業生産組織の出現の過程とともにあきらかにした。
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