研究課題/領域番号 |
04041059
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅原 和孝 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80133685)
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研究分担者 |
ダッタ A. ボツワナ大学, 開発研究所, 教授
野中 健一 三重大学, 人文学部, 講師 (20241284)
大野 仁美 麗澤大学, 外国語学部, 講師 (70245273)
中川 裕 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (70227750)
池谷 和信 北海道大学, 文学部, 助手 (10211723)
大崎 雅一 姫路工業大学, 自然科学研究所, 講師 (40254453)
田中 二郎 京都大学アフリカ地域研究センター, 教授 (30027495)
伊谷 純一郎 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (10025257)
TANAKA Jiro Center for African Area Studies, Kyoto University
ダッタ A ボツワナ大学, 開発研究所, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
30,500千円 (直接経費: 30,500千円)
1994年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1993年度: 10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
1992年度: 10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
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キーワード | 狩猟採集民 / 定住化 / 人口動態 / 生業生態 / 文化変容 / 平等主義 / グイ・ガナ方言 / 言語行為 / 混合経済 / 乾燥地への適応 / 会話分析 / 現金経済の浸透 / グウィ・ガナ方言 / 民族分類体系 / 昆虫食生態 / 日常会話 / 狩猟採集文化 / 現金経済 / ヤギ牧畜 / 乾燥帯農耕 |
研究概要 |
平成4年度には、定住地における居住様式と婚姻関係の変化を分析し、周辺環境の破壊に伴う集団の分散傾向を明らかにした。さらに壮年期・青年期の男女多数が賃労働に携わることにより、現金経済の浸透が進み、伝統的な社会関係に大きな影響を及ぼしていることが判明した。学校制度の導入によりサンの多くの児童・青年が小学校を経て、近隣の中・高校にまで進学しつつあり、彼らを通じて流入する近代的価値と平等的な規範との相克が顕著になっていることがわかった。日常会話の分析からは、このような状況下での社会的葛藤の諸相が明らかになった。また広範なインタビューにより、個々人の名づけの由来となったエピソードを多数集積し、個人名が共同的な記憶装置としての役割をになっていることを明らかにした。さらに、食物規制の分析から、顕著な男女差と個人的な変異性の高さとがうかびあがり、狩猟採集文化の基盤にある自然認識の一端を把握することができた。言語学的な調査としては、グイ方言、ガナ方言の基礎語彙約2000語を採取して音声学的な観察と分析を行ない両方言の音韻組織の概略を明らかにした。また基本文型の収集と分類によって統辞研究の基礎資料を整備した。生業については、ヤギ牧畜の進展と、それに伴う社会関係の再編が観察された。また乾燥地に適応した在来の野生植物数種をサンの協力を得て実験的に栽培したが、雨量の不足と隊員帰国後の管理の不十分さのため、成功には至らなかった。 平成5年度には、人口学的資料の収集と分析を行ない、定住化以降の出産率の増大と幼児死亡率の低下を確証した。生業については、定住村落以外の近隣地域の比較調査から、広域にわたる家畜の貸借関係を分析し、狩猟採集と混合した牧畜活動の様相を解明した。さらに雨季における農業活動の観察から、労働投下量と収穫量の概略を把握するとともに、栽培品種の多様性と乾燥への適応性を解析した。また昆虫類の名称と標本を多数収集しその認知体系を明らかにするとともに、採取・調理活動を克明に観察し、昆虫食の生態学的な意義を解明した。日常会話の分析からは、相手に依頼や要求をするときのロジックや戦略が言語行為論の視座から明らかになった。言語学的な調査では、グイ・ガナ両方言の文法記述に不可欠な形態論・統語論の基礎資料を集積するとともに、狩猟文化に特徴的な動物に関わる特殊語彙を採集した。また歌や韻文といった言語芸術を記録し、音韻論的・音声学的な解析を行なった。さらに親族名称の体系を言語学的に明らかにし、婚姻・譲渡・行動規範などとの関わりを解明した。ナミビアでの広域調査の比較からは、カラハリ砂漠の鳥類相の特性が明らかになるとともに、鳥類の認識に関わるサンの特質が明確になった。なお、ボツワナ大学のスタッフは現地調査をふまえて独立以前の歴史資料を分析し、バントゥ系農牧民とサンとの接触の特徴を明らかにした。研究代表者はロンドンにおいて、植民地時代の関連資料を検索・収集した。 平成6年度には、人口学的資料をさらに充実させた。定住化がサンの人口動態全般に及ぼした影響を明らかにすべく、統計的解析を続行中である。また、ナミビアのサンの自治・開発方式との比較調査にもとづき、定住化にともなう生業生態、および社会=経済関係の再編成を総合的に解明した。さらにこれまで蓄積された日常会話の資料を生活史に関する語りの資料で補完し、さまざまな言語行為を語用論的に分析し、平等主義を支える意思決定の機構を明らかにした。言語学的な調査では、グイ方言とガナ方言を歴史言語学・社会言語学の視点から分析し、両方言の祖語の再構成を試みるとともに、これまでに蓄積された語彙・文法資料を再検討し、包括的な辞書の編纂を進めている。また幼児の言語獲得と二言語使用の様態を発達言語学的な観点から分析した。さらに、北部・南部サン語の資料を豊富に蓄積しているドイツと英国において資料の比較調査を行ない当該分野の専門家と討議した。民族動物学的な調査としては、昆虫をはじめとする小動物の認識と利用を体系的に分析し、雑食文化に基礎をおいた自然観を解明した。また女性の人類学の視野から女性のコミュニケーションの特質を明らかにするとともに、生活史の聞きとりを行ない、とくに初潮儀礼にかかわる精緻な文化装置系を解明した。ボツワナ大学のスタッフは現地調査をふまえ、独立後から現代に至る政府のサン政策の変遷過程を解明した。
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