研究課題/領域番号 |
04041061
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
掛谷 誠 京都大学, アフリカ地域研究センター, 教授 (30020142)
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研究分担者 |
伊谷 樹一 宇都宮大学, 農学部, 助手 (20232382)
杉山 祐子 弘前大学, 人文学部, 助教授 (30196779)
高村 泰雄 京都大学, アフリカ地域研究センター, 教授 (30026372)
今井 一郎 弘前大学, 人文学部, 助教授 (50160023)
荒木 茂 京都大学, アフリカ地域研究センター, 助教授 (00158734)
岡 恵介 アレン短期大学, 英語英文科, 助教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
30,000千円 (直接経費: 30,000千円)
1994年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1993年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1992年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
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キーワード | アフリカ / 疎開林 / 焼畑農耕 / チテメネ / 内発的発展 / 農業生態 / ベンバ族 / 半常畑耕作 |
研究概要 |
ザンビア国北部州の疎開林帯に住むベンバ族を対象とし、伝統的な焼畑耕作(チテメネ耕作)と、新たに普及しつつある半常畑耕作をめぐって、農業生態学的調査と社会生態学的調査を実施した。また、農産物と乾燥魚の交換などを通じて、ベンバと恒常的な関係をもつバングウェウル・スワンプ域の半農半漁民、および、タンザニア国の疎開林帯に住む農耕民トングウェ族、マテンゴ族、ニャムウェジ族の比較調査を進めた。これらの調査から、地域の生態と伝統に根ざした持続可能な農業生産と内発的発展の可能性を考察する基礎的資料を得た。その主要な研究成果は以下のようにまとめることができる。 1、ベンバ農耕システムの変容と安定のメカニズム:チテメネ耕作と呼ばれる特異な焼畑農耕に強く依存し、自給的な農業によって生活していたベンバの村むらでは、1986年以降に急速に半常畑耕作を導入して換金作物のトウモロコシの栽培をはじめ、急激な生活の変容期を経験した。それは、ネガティブ・フィードバックとして働いていた伝統社会における平準化機構が、ポジティブ・フィードバックに切り替わり、村レベルと国家レベルの社会経済的な動態が同調する過程であった。その後、村内では世代の交代を背景として、世帯間の耕作規模の差異化を推し進める社会的過程と、他方で、その差異を平準化する過程が交錯し、焼畑と半常畑が併存する安定した農業システムを形成しつつある。このようなプロセスとメカニズムの詳細が明らかになり、また、経済の自由化政策が遠隔地の村での農業におよぼす影響について解析が進んだ。 2、チテメネの生態:チテメネ耕作の大きな特徴は、疎開林の木に登ってすべて枝を切り落とし、焼畑耕地の6倍以上の伐採域から中心部に枝葉を集め、そこに火入れする点にある。フィールドと実験室をつなぐ研究によって、その農法は、耕地に灰を添加しつつ焼土効果・乾土効果を引き出し、また雑草や虫害を防除することなどが解明された。チテメネは輪作・混作を組み込んだ農法であり、主要作物であるシコクビエは3t/ha(穂重)、キャッサバは2t〜3t/ha(塊根部)程度と、高い生産力を保持していることが明らかになった。チテメネ耕作は、疎開林の貧栄養土壌のもとで持続的な生産を確保する農法であることを示す調査結果を得た。 3、チテメネを支える民俗知識と世界観:チテメネに関わるベンバの民俗知識や儀礼について多くの資料を得た。疎開林の木に登って枝を伐採する作業は、祖霊に対して焼畑開墾の了解を求める行為であり、火入れは、「熱さ」と「冷たさ」をめぐるコスモロジーと深く連動している。チテメネと主要作物のシコクビエは、ベンバのアイデンティティを支えているのだが、それらについての知識や世界観は世代間で大きな差異を示しつつある。こうした状況と農業システムの変容との相互関係が解明された。 4、環境利用の動態:ラインセクト法・コードラート法による植生調査や、航空写真・衛星画像の解析により、チテメネ耕作が疎開林に与えるインパクトや、疎開林の更新過程の資料を得た。その結果、伐採地では14年後、耕作地では30年後に疎開林の再利用が可能になることや、出造り耕作などによって疎開林の分散利用がはかられてきたこと、半常畑耕作の進展や、政府が入植者を募って開墾を進めるプロジェクトが開始され、環境利用のパターンが変化しつつあることなど、環境利用の実態と動態について詳細な分析を進めることができた。 5、疎開林帯に住む諸民族の比較研究の進展:川辺林などの森林を開墾するトングウェ、疎開林を草地に変えて集約的な農業を営むマテンゴ、キャッサバのマウンド栽培と漁労の複合的生業を営むバングエウェル・スワンプの半農半漁民、疎開林の更新を前提として焼畑農耕を保持するベンバについての資料が集積され、疎開林帯における在来農業と、それを支える農耕民社会がもつ潜在力についての研究が進展した。
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