研究課題/領域番号 |
04041065
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東 滋 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (20027486)
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研究分担者 |
NENGAR Wiraw ハサヌディン大学, 助教授
平吹 喜彦 宮城教育大学, 助教授 (50143045)
鳥居 春巳 静岡県林業技術センター, 主任研究員
野崎 英吉 石川県白山自然保護センター, 主任研究員
鈴木 晃 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (40027488)
下川 悦郎 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (60041670)
渡辺 隆一 信州大学, 教育学部, 助手 (10115389)
山根 正気 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (30145453)
田川 日出夫 鹿児島大学, 教養部, 教授 (90041756)
NENGAH Wiraw ハサヌディン大学, 助教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
19,500千円 (直接経費: 19,500千円)
1993年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1992年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
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キーワード | 東カリマンタン / クタイ国立公園 / 熱帯多雨林 / 山火事 / 生態系のサクセッション / 永久クオドラート / 動物相 / 動物による種子散布 / 動物 / 種子分散 |
研究概要 |
1982-83年の今世紀最大といわれるエルニーニョ現象にともなう異常乾燥で、東カリマンタンの熱帯多雨林域では350万ヘクタールにおよぶ地域で山火事が起こった。クタイ国立公園でも約1/2の地域に火が入った。熱帯多雨林気候ではこの程度の乾燥は数十年程度のサイクルで起こると推定されるが、今回は史上最大規模の森林火災となった。* 1986年度に科研費(海外)(代表田川日出夫教授)により、遷移初期の状況と山火事の影響の把握とを目的とした総合的調査が行われた。 火災後10年に当たる第二次調査は1992年度にひき続いて、今年度も行われ、次のような成果をえた。 1.1992年度に設定した4ケの永久調査区(クオドラート40m×40m)で、8月に稚樹の消長について調査した。リタートラップの回収を行い落葉枝と落果量を調査した(毎月1回回収)。二次林の永久調査区2つを追加設定した。 2.造成道路脇の二次植生に14ケのプロットを設け植生調査を行ない、Braun=Blanquet法による群落学的解析をおこなった。(渡辺、平吹、Wirawan) 3.土壌動物の代表としてアリ類のフォーナを5つのプロットで、蜂蜜トラップと土壌サンプルとによって調べた。(山根) 4.種子分散を調べるための調査プロットを設けた。1)島状に焼け残った高木の小団林を中心とする帯状区(100m×5m)、2)屋敷跡の旧ハウスガ-デンから、二次林へかけての帯状区(40m×10m)。成木および稚樹の測樹(位置と大きさ)を行い、母樹からの分散のおこり方を調べた。同じところで、哺乳動物の糞の出現頻度をチェックし、糞に含まれる種子の種構成を調べた。 (Oka、東、Wirawan) 5.マレーシベットとカニクイザルについて、ラジオテレメトリーを援用して生態を調べた。マレーシベットについては個体群の構成の変化と移出・移入、カニクイザルについては果実の消長と植生帯の利用およびノマディズムとの関係を調べた。(佐々木、野崎、東) 6.マングローブ帯に接する海岸部の二次林、丘陵部の高木林と二次林のモザイク、焼けなかった原生林でライントランセクトによる目撃、痕跡(足跡、オランウータンのベッド)、音声によるセンサス、自動撮影装置などの調査法を併用して、哺乳類と若干の鳥類の種組成の確認と相対生息密度の調査を行った。 7.オランウータンやミュラーテナガザル、カリマンタンクジャクのように火災後も一定の個体数を維持してきた動物群では分布域の拡大が、マカク類やサイチョウなど広い範囲で姿を消していた動物群では復活やこれまでいなかった地域への植民が起こり始めていることが確認された。一方、バンテンやルサジカなど草食獣の個体数の顕著な増大は、起こらなかったらしい。 (佐々木、野崎、東;鈴木) 8.Later pioneer species(後期先駆種/極相陽樹)の生活史、樹木の開花・展葉期の昆虫の発生と捕食鳥類の活動をめぐるナチュラル・ヒストリーについての研究が進められた。 (Wirawanほか) 9.熱帯多雨林の大型哺乳動物の生態学的研究に、人工衛星による位置測定・生理生態情報の収集を導入するための予備実験として、送信器を持ち込み、アルゴス・システムを用いて、これによる位置決定の精度検定、熱帯林の電波透過率の測定をおこなった。(東、佐々木、野崎) 10.そのほか、1986年以後数年間の間に閉ざされてしまった内陸部への調査ルートの切り開きや、新たに発見された火の入らなかった林分周辺での調査区の設定をおこなった。また、超高木を利用して高さ40mの簡易観察・観測点を設けた。 クタイ国立公園は、ボルネオ島の低地多雨林の(保護地域の)なかで、タンジュン・プティン国立公園と並んで、数少ない大面積の保護区域である。丘陵部の混合フタバガキ林としては、ほとんど唯一の大面積保護区で、火災以前には、生物多様性のきわめて高い地域とされた。今年度までの調査で、森林の回復の可能性については時間だけの問題であるようだ。ただし、生物多様性の回復に関しては、多くの問題があり、修復や保護区の拡張を含むEcosystem managementが緊急かつ重要な課題となる。 クタイ国立公園の境界の外側では、産業造林による天然林の少数樹種人工林への転換が大規模かつ急速に進行中であり、かっての火の入った森林の耕地化が着実に進んでいる。
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