研究分担者 |
GREENWALT Be アーカンソー州立大学, 農学部, 講師
COLMAN David マンチェスター大学, 農学部, 教授
HERRUZO Casi コルドバ大学, 農学部, 教授
CHEN Dean T. テキサスA&M大学, 農学部, 教授
ZHONG Funing 南京農業大学, 教授
CHILD Natham 米国農務省, コメ経済専門官
SHAFFER Stev カリフォルニア州食料, 農業省, 専門官
WAILES Eric アーカンソー大学, 農学部, 助教授
小林 一 鳥取大学, 農学部, 助教授 (40225529)
笠原 浩三 鳥取大学, 農学部, 教授 (60135837)
藤井 嘉儀 鳥取大学, 農学部, 教授 (20032097)
樋口 英夫 鳥取大学, 農学部, 教授 (60032083)
橋本 俊司 鳥取県農業試験場, 研究員
宮田 邦夫 鳥取県農業試験場, 研究員
津野 幸人 鳥取大学, 農学部, 教授 (00036287)
金田 忠吉 神戸大学, 農学部, 教授 (80233899)
稲本 志良 京都大学, 農学部, 教授 (80026468)
CASIMIRO Her コルドバ大学, 農学部, 教授
BERT Greenwa アーカンソー州立大学, 農学部, 講師
JAMES G Ryan 豪州国際農業研究所, 副所長
DAVID Colman マンチェスター大学, 農学部, 教授
TONGROJ Onch カセサート大学, 経済学部, 教授
CRISTINA Dav 国際稲作研究所(IRRI), 研究員
STEVE Shaffe カリフォルニア州食料, 農業省, 専門官
DEAN T Chen テキサスA&M大学, 農学部, 教授
NATHAM Child 米国農務省, コメ経済専門官
ERIC J Waile アーカンソー大学, 農学部, 助教部
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研究概要 |
今年度の研究では、中国とヨーロッパに重点を置き調査した。なお、中国では事前調査で判明しているジャポニカ米の潜在的適地として揚子江(華中)から東北地方に至る地域を調査した。華中地域は中国でも稲作の中心地。ここに約2千万haの稲の作付けが行われている。気候は温暖であるが、水供給は揚子江の地の利を生かし豊富である。しかも、近年では中国もコメは過剰生産が深刻な問題となってきており、これを背景に華中ではこれまでのインディカ米からジャポニカ米に切り替えようとする動きが大きい。浙江省でジャポニカ米の生産量は、1985年は全体のコメ生産量の29%であったが、1992年は35%を占めている。こうした動きは230万haの作付け面積を持つ江蘇省でも同じである。また、揚子江を上った湖南省(作付け面積400万ha余り)でもこの傾向がややあると思われる。 華北や東北(黒龍江、吉林、遼寧の三省)では伝統的にジャポニカ米を生産している。生産面積は華中が華南に比べ合計で300万haと少ない。しかし、東北地方では寒冷地にも関わらず稲作技術が発達し、ここ10年来で生産面積も大きくのびた。東北地方はかつてはコメの不足地域であったが現在はやはり過剰となっており域外への移出や国外への輸出に対して非常に積極的である。 中国のジャポニカ米の品種改良では日本で開発された品種が広く利用されている。また、現在でも日本品種(フジヒカリ、シモキタ、キララ397、アキヒカリ、トヨニシキなど)が栽培されている。中国内のジャポニカ米の生産コストは安く、小売価格でも精米10kg当たり約20元(260円)と安い。 ところで、中国産のジャポニカ米の味は日本人の口にどれくらい好まれるかについて、中国からサンプルを持ち帰り、日本で実際に試食して分析を試みた。わが研究グループでは平成4年度から毎年、外国産ジャポニカ米について新しい品質の評価の方法として、価格的評価を行っている。これは外国産米に対し日本で購入するとしたらいくらの値段であれば買うかを、パネラ-の一人一人が試食し評価して全体の平均を出すものである。これによると中国のジャポニカ米は精米10kg当たり2,500円から3,500円レベルのものが一般的である。しかし、華中では「精粳米」が4,500円レベルに評価され、また、黒龍江省の「合江19号」と「松粳2号」は5,500円前後の高い評価が出た
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。 本調査研究において、中国ではジャポニカ米の潜在的生産地としては某大な面積が存在することが判明した。しかし、これは生産農家にとって決して魅力的な収入とはなっていない。このため、農村地では稲作に対してはあまり意欲がなく、農家は自家消費の分だけを生産し、残る時間は都市へ出稼ぎに出るという傾向が出ている。また、政府もコメに関しては減反をにわかに進めていく方向にある。 ヨーロッパでは西欧のイタリア、スペイン、及びフランス、東欧のハンガリーとブルガリアを調査した。西欧では、EC(ヨーロッパ共同体)のCAP(共通農業政策)により域内の市場価格が国際価格より高く保たれており、生産は伸びている。しかし、近年は過剰ぎみで推移しており、域内で不足しているインディカ米の増産を奨励している。西欧のコメ生産地はいずれも地中海式気候でカリフォルニアとよく似ており生育期の雨量は極めて少なく、年間でも、600ミリ前後の降雨量である。ジャポニカ米の生産においては適地である。生産面積の最も大きいイタリアでは1992年産の場合、現在はジャポニカ米(長粒種A)の生産が約4割と大きなウェートを占めている。長粒種Bとして区別されているインディカ米は生産が伸びてきているがまだ1割強、中粒種が3割、短粒種が2割の作付け面積となっている。日本産品種米はイタリアでコシヒカリ、スペインでアキタコマチがすでに経済ベースに乗って生産されており、今後も増産される見通しである。 一方、東欧では作付面積は国際競争の中で大巾に減少している。ハンガリーでは1955年に約5万haあったものが、1993年にはわずか4,200haとなり、壊滅寸前の状況である。またブルガリアも作付面積はここ10年余りで3分の1に減って約5千haとなり、また、単収も減少の傾向にある。ジャポニカ米が生産されてはいるが、水供給は十分ではなく陸稲が多い。また、コストが国際価格に比べ高い。このため、市場価格が上昇したとしても増産能力は多くない。 コメの国際市場は1980年前後をピークに低迷をつづけ、生産国は厳しい経済環境に置かれている。こうした中で、国内の保護政策が行われている国々では、生産は安定、または増産しているが、そうでない国々では一般的に減産の傾向にある。こうした中でジャポニカ米(特に日本産品種米)の生産は在留邦人からのニーズが高いため、市場価格においても他のローカル品種のコメに比べ高く、増産の勢いである。 近年の世界的なコメ過剰を背景に、世界の各稲作地帯では経済メリットの高い日本産品種米に生産可能な地域では今後、ローカル品種からシフトしていくものと考えられる。概して北(南)緯30°から45°の区域で現在インディカ米を生産している地域ではジャポニカ米もほぼ問題なく生育する状況にある。よって、ジャポニカ米の生産がインディカ米に比べ十分により大きな経済メリットがある限り、ジャポニカ米にシフトしていくと考えられる。 隠す
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