研究課題/領域番号 |
04041073
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 島根医科大学 |
研究代表者 |
奈良 安雄 島根医科大学, 医学部, 助手 (80116417)
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研究分担者 |
森口 秀幸 ブラジル南リオグランデカトリック大学, 大学院, 教授
森口 幸雄 ブラジル南リオグランデカトリック大学, 老年医学研究所, 所長
家森 幸男 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80025600)
J.DAVID Curb ハワイ大学, 老年医学, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1992年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | ブラジル日系移住者 / 移民研究 / 栄養 / 高血圧 / 虚血性心疾患 / 魚介類摂取 / タウリン / 多価不飽和脂肪酸 / 肥満度 / コレステロール / ナトリウム / カリウム / カルシウム |
研究概要 |
高血圧・虚血性心疾患予防における魚介類摂取の重要性: ブラジル日系移住者における栄養と循環器疾患に関する移民研究 【目的】栄養因子の循環器疾患へのリスクファクター、ベネフィシィアルファクターとしての影響を明らかにするために、日本における出身県を一致させた移民研究を沖縄、島根両県出身者を中心とした在ブラジル日系移民者の2集団、および沖縄、島根両県の各集団を対象として実施した。 【方法】沖縄県与那城村、西原町より234名(JO)、島根県大田市より199名(JS)およびブラジル国サンパウロ州サンパウロ市、南マットグロッソ州カンポグランデ市の日系移住者よりそれぞれ102名(BS)、160名(BC)(沖縄、島根出身者がそれぞれ合計70%、95%)の年齢45から59歳の男女を抽出し、身体測定、コロトコフ音自動記録血圧計による血圧測定、心電図検査、空腹時採血、24時間(24h)尿採尿、栄養などに関する問診などを実施し、各栄養マーカー(血清総コレストロール(T-Cho)、血漿リン脂質脂肪酸(FA)、24h尿中電解質、タウリン(Tau)など)の測定を島根医大、WHO国際共同研究センターでおこない、平均の検定に分散分析、比率の検定にカイ二乗検定を用いて検討した。 【成績】肥満度は、JSに比べJO、BSさらにBCで高く(JS:男23.3±2.7、女23.2±2.8、JO:男24.8±2.3、女24.8±2.4、BS:男25.3±3.1、女24.8±3.9、BC:男26.1±3.2、女26.4±4.0、p<0.05、平均±標準偏差)、血圧レベルは、拡張期血圧でJSの男女でやや高く、降圧剤服用者とWHO区分の高血圧を示した者をあわせた高血圧者の比率ではBCで高かった。(%、JS:男23.7、女9.3、JO:男15.9、女18.4、BS:男18.9、女26.5、BC:男33.3、女34.6、p<0.05)。心電図上でST-T変化(ミネソタコード:VI-1,2,V-1,2)を示した者の比率は、JS、JOさらにBS、BCの順に多く(%、JS:男2.0、女2.0、JO:男3.4、女4.4、BS:男3.7、女4.1、BC:男7.9、女9.6)、BS、BCでは一世より二世でより多い傾向にあった。T-ChoはBSでやや高いほかは明らかな差は見られなかったが、男性のFA構成比(%)で、BS、BCのn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)が有意にJO、JSより低く、とくにBCで低く(JS:6.32±0.57、JO:6.40±0.34、BS:5.63±0.71、BC:2.96±0.28、p<0.001、平均±標準偏差)、n-3/n-6比も同傾向にあった。尿中栄養マーカーでは、NaがJSで高く、CaとTau(μmol/24h、JS:男2077±1488、女1459±1010、JO:男2077±1251、女1966±1814、BS:男1532±1090、女1247±1096、BC:男1499±868、女939±696、p<0.01、平均±標準偏差)がJOとJSで高く、MgはBCで高かった。食事頻度調査から、BS、BCで少ない魚介類摂取頻度(/週、JS:男4.7±2.7、女4.8±2.3、JO:男4.4±3.0、女4.4±3.3、BS:男1.9±1.8、女1.6±1.2、BC:男0.5±0.7、女0.5±0.8、p<0.01、平均±標準偏差)と多い肉食摂取(BCで顕著)、およびJO、JSの約8倍と高い経口避妊薬の使用経験者がみられた。また、個人レベルでの魚介類摂取頻度と尿中タウリン排泄量、n-3PUFA(特にエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)との間に単回帰分析により、強い有意な相関係が認められた。 【考察】沖縄、島根両県出身者を中心としたブラジル在住日系移民者の2集団と沖縄、島根両県の各1集団を対象にした栄養と循環器疾患に関する移民研究を実施し、従来からリスクファクターとして言及されてきた肥満、高血圧、高コレストロール血症ほかに加えて、魚介類摂取頻度を反映した血漿リン脂質中のn-3PUFAおよび尿中タウリン排泄量が、高血圧頻度、心電図上ST-T変化と関連している可能性がみられたことから、魚介類摂取が循環器疾患に有益に影響する要因(ベネフィシィアルファクター)として考えられる可能性が示唆された。 【結論】ブラジル在住日系移住者における少ない魚介類摂取、多い肉食摂取の食傾向が、低い血漿リン脂質中n-3系多価不飽和脂肪酸と尿中タウリン排泄量を伴い、高い肥満度、高血圧頻度、心電図上ST-T変化と関連し、循環器疾患のリスクを高くしている可能性が示唆された。
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