研究分担者 |
WOROSUPROJO スロトマン ガジャマダ大学, 地理学部, 講師
NUTALAYA Pri アジア工科大学, 教授
PRAMOJANEE P タイ土地開発局, 研究員
RAJAGURU S.N デカン大学, 考古学部, 教授
米林 仲 千葉県立中央博物館, 環境科, 主任技師 (50250155)
宮城 豊彦 東北学院大学, 文学部, 教授 (00137580)
田村 俊和 東北大学, 理学部, 教授 (00087149)
吉野 和子 駒澤大学, 文学部, 教授 (00101329)
前杢 英明 山口大学, 教育学部, 助教授 (50222287)
高橋 日出男 広島大学, 総合科学部, 助手 (40202155)
貞方 昇 北海道教育大学函館校, 教育学部, 教授 (20116594)
河瀬 正利 広島大学, 文学部, 助教授 (30093743)
豊原 源太郎 広島大学, 理学部, 講師 (00033895)
PROMOJANEE Paiboon Land Development Department, Thailand
SURATMAN Wor ガジャマダ大学, 地理学部, 講師
PAIBOON Pram タイ土地開発局, 研究員
PRINYA Nutal アジア工科大学, 教授
SURATMAN M.W ガジャマダ大学, 地理学部, 構師
S.N.RAJAGURU デカン大学, 考古学部, 教授
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研究概要 |
本研究計画「熱帯アジアにおける南西モンスーン長期変動と環境変遷」は,平成4〜6年度の3カ年にかけて,現地調査を中心に研究を行った。 平成4年度現地調査は,インド・タイ・インドネシアにおいて調査地概査と集中調査地の選定,資料の収集を実施した.まずインドでは,デカン高原ゴダヴァリ川流域の環境変遷とその年代に関する従来の見解において,一部訂正ないし補充すべき点が判明した.また,ゴダヴァリ川流域のプラワラ川沿いに,後期旧石器遺物から金石併用時代の住居跡が多数分布し,それらを手掛かりにすれば,更新世後期からインダス文明期およびその衰退期の環境変遷を復元できる見通しを得た. タイでは北部山地だけでなく,東北部高原にも更新世前・中期の礫層が分布することが判明し,それらの詳細研究によってインド・デカン高原の礫層との対比,ならびに南西モンスーン長期変動復元の可能性が得られた.また,完新世における河成・風成堆積物,同風化生成物,考古遺物等による湿潤・乾燥変化が明かとなった. インドネシア・ジャワ島中部南海岸では,石灰岩地域の海成段丘面,およびそこに発達する洞窟を調査し,乾湿変化を指示すると思われるいくつかの証拠を得た. 平成5年度にも,インド・タイ・インドネシアの3ヶ国において現地調査を行った.インドではデカン高原西部を中心に,地形,表層物質などに関する現地調査を行った.その結果,完新世堆積物は必ずしも3000年前に形成されたものとは限らないこと,更新世砂礫層は地形形成層とそれより古い地層に細分されることなどが判明した.最終氷期前後の環境変化が地形・地質へ及ぼす影響は,半乾燥地域の布状洪水による面的侵食が卓越する地形形成の大きな枠組みの中で,本流性(異地性)堆積物の層相に微妙に反映されていることがわかった. タイでは西部山麓地帯,東部高原地帯などを踏査して,各種地形および風化断面の観察と試料採取を行った.その結果,最終氷期より前には斜面・河川とも,現在より活発な侵食・堆積が行われたが,最終氷期およびそれ以降は既存の堆積物からの細粒物質の洗い出しと,水および風によるその移動・再堆積が進行していることなどが明らかになった. インドネシアでは,ジャワ島南東部のカルスト地域で,時代によるカルスト化作用の強弱から最終間氷期以降の古環境を推定するための調査を行った.インド洋にむけて排水するサデンは完全なドライバレーで3段の河岸段丘がみられ,いずれも段丘形成期に関連して発達した地下水系の痕跡がみられた.低位の河岸段丘面形成後,ここでは,急激な環境の変化に河川の作用が対応しきれず,地下水系を形成したものと考えられる.これには水量の減少,基準面の急激な低下等が起因していることが明らかになった. 平成6年度においては,第3次現地調査として,代表者による補足調査を行った.また,3年間の研究の総括として,インド・タイ・インドネシア三地域における最終氷期以降の環境変遷過程を復元した上で,両者の相互比較によって南西モンスーン卓越地域の古環境変遷の一般則を求める試みを行った.さらに研究の取りまとめの過程において,研究の成果を隣接地域で得られている関連情報と比較検討することによって,全地球システムの一環としての南西モンスーンの長期変動のダイナミズム解明を行うために,外国人研究者を招へいし,関連研究分野の研究者も多数集まって,研究集会および公開シンポジウムを行った.その結果,次のような課題が導き出された. (1)現在の気候学の知見を利用することによって,気候学から古環境を復元する方法については,次第に方法が確立しつつある.今後は高緯度地域と低緯度地域の大気循環についての研究の進展が望まれる. (2)陸域の古環境復元には,古土壌学,地形学,花粉学などにおける分析方法のいっそうの発展が必要である.さらに,様々な方法によって得られた結果の補間が行えるような研究方法の発達が望まれる. (3)熱帯・亜熱帯モンスーンアジアにおいて,最新の研究手法によって得られた古環境復元に関するデータの収集がなされるべきである. (4)陸域環境においては,森林破壊や農業などによる人類活動の影響が,インドネシア,インド,中国,タイなどの研究において指摘されている.先史,歴史時代の人類活動についてのデータも収集する必要がある.
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