研究課題/領域番号 |
04041077
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
仲谷 英夫 香川大学, 教育学部, 助教授 (20180424)
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研究分担者 |
鄭 紹華 中国科学院, 古脊椎動物与古人類研究所, 副教授
宗 冠福 中国科学院, 古脊椎動物与古人類研究所, 副教授
黄 万波 中国科学院, 古脊椎動物与古人類研究所, 副教授
武藤 鉄司 長崎大学, 教養部, 講師 (70212248)
三枝 春生 姫路工業大学, 自然・環境科学研究所, 助手 (70254456)
川邉 孝幸 山形大学, 教育学部, 助教授 (00214685)
那須 孝悌 大阪市立自然史博物館, 学芸課, 学芸課長代理(研究職 (30110042)
ZHENG Shaohua Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Academia Sinica
ZONG Guanfu Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Academia Sinica
HUANG Wanpo Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Academia Sinica
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1993年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1992年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 新生代後期 / 古環境 / 堆積環境 / 気候変動 / 哺乳類 / 微化石 / ユーラシア大陸 / 中国北部 / 微石化 |
研究概要 |
本研究ではユーラシア東部の高緯度地帯から低緯度地帯にかけて、新生代後期の哺乳類化石産地を調査し、精密な層序関係を明らかにする中で哺乳類化石産出層準の確定し、それらに古地磁気層序や放射年代による地質年代学的な尺度を導入する。また、花粉などの微化石を用いた古環境解析、堆積盆の構造解析による堆積環境復元を行い、哺乳類化石の同定と系統分類学的研究を通じて種分化について解明し、これらの結果を総合してユーラシア東部での新第三紀陸上哺乳類標準層序の確立を目的としている。ユーラシア東部でこのように哺乳類化石に基づく陸上の新第三紀の標準層序を作ろうとする研究は、Tedfordの予報による楡社盆地以外には行われていない。 本年度は昨年度にひきつづき1993年8月28日〜9月8日に中国北部甘粛省霊台県地域の発掘と地質調査を行い、1993年11月に標本調査と予備的な野外調査を行った。調査地域は昨年同様、甘粛省・霊台県・邵寨郷の雷家河村の南部、西より東にかけて達渓河に流れ込む支流の任家溝、石溝、文王溝流域周辺で、緯度経度にすると北緯35度2分〜5分、東経107度42分〜46分の間の地域である。この付近に分布する上位を黄土に被われ下位の下部白亜系を被う雷家河層を発掘した。調査に際して、武藤鉄司と川邉孝幸が層序と堆積物の解析を行い、微化石分析用試料の採集を合わせて行った。化石産地Locality4での精密な発掘は主として仲谷英夫と黄万波・劉金毅が行い、鄭紹華は化石産地Locality4と6の堆積物からスクリーンアンドウォッシング法で小型哺乳類化石の採集を行った。中国側の研究分担者と協力者4名は当初の予定にはなかったが、中国側の希望で特別に2週間、霊台における滞在を延ばし、9月8日以降9月19日まで化石産地Locality4での発掘と、スクリーンアンドウォッシング法による小型哺乳類化石の採集を行った。 中国科学院地質研究所の陳明揚らは昨年われわれの調査隊とほぼ同じ時期に調査に入り、共通の断面で柱状図をとったが、1993年12月に文王溝のLocality6の断面に沿って採集された古地磁気資料の解析結果が公表された。地磁気の逆転パターンから雷家河層はおもにガウス期とギルバ-ト期を示し、一部にはガウス期とマツヤマ期の境界やクロン5までを含むとしている。 今年度の結論は、1.雷家河層の層序構造は複数のレンズ上礫岩とそれをとりまく泥質岩からなり、堆積環境は湖沼環境よりも蛇行河川とその氾濫原の環境を示す。2.発掘された2,200個近い脊椎動物化石のうち、大型哺乳類化石と小型哺乳類化石は主として鮮新世を示し、一部は後期中新世の中国北部の動物群に対比される。3.同一個体と見られるサイ科の化石が産状を記録できる状態で発掘され、このような化石は死後あまり流されていないと考えられた。4.古地磁気データはほぼ300万年に及ぶ時代を示す。5.微化石の分析を中心とする古環境解析は試料からの化石の産出がほとんど得られずまだ十分研究されていないが、予察によると木本と草本の半ばする環境を示唆している、などである。 これらを総合した雷家河層の古環境は乾燥地帯の沖積堆積盆が考えられる。ただし、陳の古地磁気データが正確ならば、雷家河層はほぼ300万年に及ぶ時代を含むことになる。しかし、雷家河層はこのような長い時代にわたって堆積し続けたにしては、同じぐらいの年代幅を持つ楡社盆地に比べて層厚が10分の1程度と大変薄く、堆積環境の解析から多くの時代間隙を含む可能性が多いことも示唆されている。 今後、微化石の分析を花粉だけではなく、貝形虫や珪藻にも広げ、雷家河層のより精密な環境復元を進めると共に、新たにユーラシア東部の低緯度地帯を代表する地域として同年代の同経度の古典的な中国南部の化石産地(雲南省)で地質年代および古環境に関する調査をおこない、陸上の新第三紀標準層序の確立をめざしたいと考えている。標本調査に関しては、雷家河層産のものを含めて、この時代の中国の哺乳類化石の系統は十分に明らかにされていないものが多いので、中国北部のみならずユーラシア各地や北米から産出した哺乳類化石を各地のコレクションを使って比較し、分類群の検討を行う予定である。
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