研究課題/領域番号 |
04041085
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
早坂 祥三 鹿児島大学, 学長 (20041212)
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研究分担者 |
OROSCO C. University of San Carlos, 助教授
BATOMALAQUE エイ. University of San Carlos, 生物学科長
棚部 一成 東京大学, 理学部, 教授 (20108640)
鈴木 廣志 鹿児島大学, 水産学部, 助手 (30162994)
大木 公彦 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (90041235)
四宮 明彦 鹿児島大学, 水産学部, 助教授 (90041722)
塚原 潤三 鹿児島大学, 理学部, 教授 (20008923)
A.BATOMALAQU University of San Carlos, 生物学科長
E.C.FLORES University of the Phillippines, 教授
A.C.ALCALA Silliman University, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
15,500千円 (直接経費: 15,500千円)
1993年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1992年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | オウムガイ / フィリピン / 地理的変異 / DNA / 生息環境 |
研究概要 |
平成5年度は、昨年度と同様夏期(7-9月)にサンカルロス大学と共同で、タニヨン海峡とボホール海峡、特にセブ島の西側および東側海域において、オウムガイの地理的変異およびその生息環境について調査した。 音響測深器および簡易ドレッヂを用いた海洋地質学的環境調査により、タニヨン海峡とボホール海峡の違いが明らかにされた。すなわち、昨年の調査海域(ボホール海峡の東側および南側の海域)が非常に傾斜の急な海底地形を示し、かつ、幾つかの谷が陸上から続いており、底質も比較的砂質であるのに対し、本年度調査した2つの海域は傾斜が緩やかで、1ないし2個の谷が陸上から続いているにすぎず、底質も比較的泥質の粒子が谷の部分に堆積していることが明らかにされた。また、ナンセン採水器を用いた水質調査では、昨年の調査海域と同様に、水深100-150mの範囲に水温躍層が存在し、この躍層よりも深いオウムガイの生息域と考えられる水深では、燐・窒素・珪素などが多く存在することも明らかにされた。さらに、タニヨン海峡の水深200m以深では、水温がボホール海峡よりも常に3-6℃高いことも明らかにされた。 オウムガイ採集のために、総数18回のトラップ採集を試みた結果、その捕獲数は45個体と昨年(22回のトラップ採集で総数19個体)に比べ多くのオウムガイが採集できた。その性比は雄:雌=2:1と、比較的雄の割合が高かったが、フィジ-やパラオで得られた性比と比べると、はるかに雌の割合が高いことが明らかになった。また、昨年のボホール島南西海域における調査では、未熟で若い個体のみが同一地点で多数採集され、オウムガイの産卵孵化場を推定するのに有力な情報が得られたが、本年度のタニヨン海峡における採集では、同一地点で小型の個体(最小個体の殻高、45mm)から大型の個体(最大個体の殻高、127mm)まで様々な成長段階のオウムガイが得られ、産卵孵化場と成体生息場との位置関係や子どもの加入時期などを推定するのに重要な情報が得られた。また、組織学的・遺伝学的研究に必要な成熟雄雌個体も多数採集され、現在この分野に関する研究が進められている。 オウムガイとともに採集された共存生物は、フィジ-やパラオと比較すると必ずしも豊富とはいえなかった。魚類では、ソコダラ類、アナゴ類、フグ類、およびサメ類が採集され、このうちサメ類はボホール海峡でのみ採集された。甲殻類では、イセエビ類、ヤドカリ類、クモガニ類、ワタリガニ類、およびエンコウガニ類が採集され、ワタリガニ類はタニヨン海峡でのみ採集され、エンコウガニ類はボホール海峡でのみ採集された。また、フィジ-やパラオで豊富に採集されたタラバエビ類はほとんど採集されなかった。棘皮動物では、ウニ類、モミジガイ類、およびクモヒトデ類が採集され、ウニ類はタニヨン海峡で多数採集された。また、タニヨン海峡では巻き貝のバイの仲間が多数採集された。現在これらの共存生物について種の同定および生息数の推定をしており、今後、海域による生物相の違いや生息密度の違いを検討し、オウムガイの生息環境としての共存生物群の特徴を明らかにする予定である。 セブ島周辺における上述の調査採集に加えて、本年度は平成5年8月と11月に、フィリピン国立博物館の協力の下にルソン島南部のバラヤン湾において、オウムガイの地理的変異比較のための標本、および生体飼育のための個体を得る目的で調査を行い、それぞれ56個体と64個体のオウムガイを採集した。このうち15個体を日本に移送し、昨年度(平成5年1月ボホール海峡で行う)に採集移送した5個体と併せて、飼育観察を継続中であり、かつ新鮮な部位を用いてDNA分析を実施する予定である。
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