研究課題/領域番号 |
04041092
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
堀井 健三 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (80209270)
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研究分担者 |
篠田 隆 大東文化大学, 国際関係学部, 助教授 (20187371)
内田 知行 大東文化大学, 国際関係学部, 助教授 (80193895)
高橋 昭雄 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
吉松 久美子 大東文化大学, 国際関係学部, 講師 (70240348)
水野 広祐 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
長沢 栄治 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
梅原 弘光 立教大学, 文学部, 教授 (00160325)
桜井 浩 久留米大学, 商学部, 教授 (60258358)
多田 博一 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (80188250)
原 隆一 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (70198901)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
19,000千円 (直接経費: 19,000千円)
1993年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1992年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
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キーワード | アジアの潅漑 / 潅漑制度比較研究 / 水利用の効率化 / 水管理の民営化 / 水利費の徴収 / 潅漑行政 / 農民水利組合 / 国際水利経営研究所(IIMI) / アジアの灌漑 / 灌漑制度比較研究 / 灌漑行政 / 国際水利経営研究所(IMII) |
研究概要 |
本年度の研究目的は1980年代以降アジア諸国に共有されている潅漑行政の再編、潅漑施設の近代化、水利組合の奨励・育成を3本柱とする水利用の効率化のための潅漑政策の機能と問題点を実態調査により明らかにすることに置かれた。昨年度の予備調査でアジア諸国の潅漑制度に関する文献調査と調査対象地の確定を行なっており、本年度の調査は水利組合あるいは受益農民からの聴き取り調査が主体となった。実態調査はマレーシア、パ-キスターン、インド、韓国、台湾、フィリピン、エジプト、レバノン、タイ、中国、ネパールのアジア11ヵ国で行なった。また、イギリスにおいてミャンマー(旧ビルマ)の潅漑行政史に関する文献調査、香港において中国の潅漑に関する文献収集を行なった。 本年度の調査により明確になった諸点を以下にまとめておこう。第1は、潅漑行政制度におけるいわゆる植民地遺制の問題である。アジア諸国の多くはかつて西欧列強や日本の植民地下に置かれていた。このために、独立後も旧宗主国の導入した潅漑行政制度が基本的に踏襲されている。西アジア(エジプト)から南アジア(インド、パ-キスターン、ミャンマー、植民地ではないがネパールも)にかけてはイギリス、東アジア(韓国、台湾)では日本の影響が大きい。もっとも、旧宗主国の影響の大きいのは比較的大規模な潅漑プロジェクトに限定されており、小規模な潅漑プロジェクトは水路の建造・維持・管理を含めて当初より農民主体で運営されていた。 第2は、いずれの諸国においても近年潅漑行政の再編がみられ、また民営化の指向されていることが確認できた。国際機関による世界的な農業・潅漑戦略の一環として民営化は推進されており、国際機関や欧米からの援助・借款への依存度の高い諸国ほど外圧が大きく作用している。もちろん、水利用の不効率など民営化を指向せざるをえない国内的事情も小さくはないが、現在のところ、外圧の大きい諸国ほど民営化のペースがはやい。 第3は、水利組合の分布、形態および機能について。水利組合は一般的にいって大規模潅漑プロジェクトの優勢な国、地域には薄く、小規模潅漑プロジェクトの優勢なところには厚く分布している。インド亜大陸を例にとると、大規模潅漑の優勢なパ-キスターンやインド北部にはほぼみられず、小河川を水源とするネパールや溜池潅漑の発達したインド南部からスリランカにかけて濃密に分布している。また、東南アジアではマレーシアにはみられないが、隣接するタイやインドネシアのバリ島には高度な水利組織が存在している。東アジアは伝統的に水利組合の分布が稠密であるが、経済発展の過程で水利組合の統合と改編が大規模に進行した。アジア諸国にみられる水利組合の組織と機能については地域的偏差が大きく、一般化は難しいが、既存のプロジェクトに対する法制を含む政府介入の度合いが高まりつつあること、共同体的慣行は弱体化しつつあること、を共通の傾向として指摘できよう。これとは別に、政府は民営化の一環として水利組合の存在していなかった地域に新たに水利組合を育成しようとしているが、政府の管理に慣れきった農民の反応は鈍い。水利組合の育成をスムースに進めるための情報交換が緊急の課題となっている。 第4は、多くの地域とりわけ大規模潅漑プロジェクトの受益地で地下水の利用が近年急速に進展している。適時かつ安定的に供給される水の経済価値が高まっているためである。地表水と地下水の併用は従来の水利組織に対して大きな影響を与えており、魅力ある研究分野となっている。 本研究の研究成果の一部を堀井健三編『アジア潅漑制度比較研究試論』(大東文化大学現代アジア研究所、1994年3月)にまとめた。この中間報告書には、堀井健三(マレーシア)、Horii(Malaysia & Japan)、吉松久美子(タイ)、高橋昭雄(ビルマ)、多田博一(インド)、篠田隆(ネパール)、原隆一(イラン)、長沢栄治(エジプト)の8本の論文が収録されている。最終報告書はあと1〜2年かけて邦文、英文の双方で刊行する予定である。
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