研究課題/領域番号 |
04041093
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
立山 龍彦 東海大学, 文明研究所, 教授 (90119686)
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研究分担者 |
竹村 典良 桐蔭学園横浜大学, 法学部, 講師 (60257425)
塩谷 保 敬和学園大学, 人文学部, 助教授 (70257434)
池田 良彦 東海大学, 開発工学部, 助教授 (60212792)
金子 勲 東海大学, 文明研究所, 教授 (40077996)
覚正 豊和 千葉敬愛短期大学, 国際教養学科, 助教授 (50224358)
松村 孝雄 東海大学, 文学部, 教授 (10107526)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1993年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1992年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
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キーワード | 高齢者犯罪 / 施設内処遇 / 人権 / 尊厳死 / 消費者保護 / 消費者オンブズマン / 障害者 / ヴィダ-オースン / 社会保障 / 社会福祉 / 高齢消費者保護 / 遺言・相続 / AARP:全米退職者協会 / 安楽死(法) / 高齢犯罪者・被害者 / 高齢化社会 |
研究概要 |
我が国における社会の高齢化は、世界に類のないスピードで進行しており、出生率の低下とあいまって西暦2020年には生産年齢に対する65歳以上の高齢者人口の割合は、2.5人に対して一人ということになる。これは我が国がかつて経験したことのない社会現象であり、種々の社会的ひずみが現れる事も想像に難くないところである。そこで我々は、この来るべき高齢化社会において生ずるであろう法的問題を取り上げ、比較法的観点から調査研究を行った訳で、昨年度はアメリカとカナダを、今年度は北欧を中心に調査した。 北欧は長寿国であり、既に高齢化社会を迎えている訳であるが、その法的諸問題のうち刑事法の分野に関しては、高齢者犯罪および刑事施設内での高齢受刑者に対する処遇を中心に調査を行った。しかし北欧全体を通じて、高齢者による犯罪発生件数が非常に少なく、従って刑務所に収容されている高齢受刑者も各刑務所当たり数人というのが現状(例えば、フィンランドでは50歳以上の受刑者は全国で160人しかいない)である。これは福祉政策の下で、高齢者が余裕のある生活を営むことが出来、犯罪に走る傾向が少ないことと、高齢犯罪者に対する起訴率が比較的低いことに由来するものであろう。それ故にアメリカ等と異なり、高齢受刑者に対する刑務所側の特別プログラムは存在しないが、北欧の刑罰理念すなわち刑罰の本質は応報ではなく、教育でもなく、単に自由の制約がその本質であり、刑務所内での生活と外部社会での生活を区別する必要はないとする考え方から言えば、高齢受刑者に対する特別処遇の必要がないことも理解出来よう。 一方、民事法の分野に関しては、高齢消費者の保護に対する各国の法制度、救済措置ならびに行政の対応および今後の展望等を中心に調査を行い、北欧各国に存在する消費者オンブズマン委員会あるいは消費者政策委員会等の我が国への導入の是非について考察を行った。また、少額被害事件の訴訟手続に関する各国の態様も併せて調査した。尚、刑事事件の軽罪に関しては、ある種の仲裁制度、すなわち紛争処理委員会も存している。 更には、高齢者の自己決定権に基づく治療拒否権を中心に、尊厳死に対する各国の対応、国民の意識を調査し、北欧各国でも意見の分かれるホスピス(例えば、フィンランドでは積極的にホスピスの数を増やそうとしているのに反し、デンマーク、ノルウェー等では、ペイン・クリニックの充実を理由にホスピスの存在には否定的な態度を取っている)やターミナルケア等に関する施策の相違を明確にすると同時に、昨今北欧で問題になっている「老人虐待」の実状と、その背景について調査を行った。 そして、高齢者や心身障害者に対して、我々は容易に施設収容という安易な方法を取りがちであるが、それが社会参加と文化的生活に関しての豊かさという基準によって評価される場合、その方法は十分に望ましいものであろうかとの観点から、特別な介護が必要な人々を集めてつくられた共同体、すなわちその様な人々の自助・自立を中心とした村落共同体であるノルウェーのヴィダ-オースンでの調査を行い、我が国が行おうとしている施設の充実あるいはホームヘルパーの拡充といった施策が、果たして肯定すべきものかどうかを考察した。このヴィダ-オースンは現在160人の居住者(内60人が60歳以上)で構成されており、心身障害者は72人で、協力者と呼ばれる健常者が51人、残りは子供である。彼等が17のハウスに分かれ、家族を構成し一つの家庭を作っているのである。従って我々は、ヴィダ-オースンのシステムを推奨しそれに関して述べられたオスロ大学法学部ニルス・クリスティー教授の著書(“Beyond loneliness and institutions")を翻訳し(邦題「障害者に施設は必要か」)、平成6年4月に東海大学出版会より出版して、その紹介を致したいと思う。
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