研究課題/領域番号 |
04041104
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京国立博物館 |
研究代表者 |
西岡 康宏 東京国立博物館, 学芸部, 東洋課長 (40000351)
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研究分担者 |
古谷 毅 東京国立博物館, 学芸部・考古課原史室, 研究員 (40238697)
井上 洋一 東京国立博物館, 学芸部・考古課, 主任研究員 (60176451)
臺信 祐爾 東京国立博物館, 学芸部・美術課建築室, 室長 (80163715)
小泉 惠英 (小泉 恵英) 東京国立博物館, 学芸部・東洋課インド・南東アジア室, 研究員 (40205315)
谷 豊信 東京国立博物館, 学芸部・東洋課, 主任研究員 (70171824)
松本 伸之 東京国立博物館, 学芸部・東洋課インド・南東アジア室, 研究員 (30229562)
早乙女 雅博 東京国立博物館, 学芸部・東洋課北東アジア室, 室長 (80150035)
高浜 秀 東京国立博物館, 学芸部・東洋課インド・南東アジア室, 室長 (60000353)
後藤 健 東京国立博物館, 学芸部・東洋課西アジア・エジプト室, 室長 (40132758)
本村 豪章 東京国立博物館, 学芸部, 考古課長 (40000343)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
16,000千円 (直接経費: 16,000千円)
1993年度: 12,000千円 (直接経費: 12,000千円)
1992年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 考古学 / シリア / パキスタン / ハザーラ / コーテ・パハリ / ポ-カル / ストゥーパ / 美術史学 / ガンダーラ / 考古学的調査 / 東西交渉 / 都市遺跡 |
研究概要 |
平成5年10月1日より、2週間にわたってシリア・アラブ共和国において考古学的遺跡、並びに博物館所蔵資料を調査した後、10月15日より12月23日までの間パキスタン回教共和国北西辺境州において調査活動を行った。 シリアでは、ダマスカス、パルミュラ、アレッポ、ハマ、イドリブ、タルトゥース、スウェイダの各博物館所蔵品の調査、東西交流に関連する資料の収集と平行して、パルミュラ、ダマス南部のボスラ、シャハバ、スウェイダ、ハマ北西部のアパーメア、イドリブ県のエブラ、テル・マストゥーマ、アレッポ北部のサン・シメオン、アインダーラ、ラタキア近郊のウガリトなどの遺跡を踏査した。 パキスタンでは、平成4年度に着手したハザーラ地方の考古学的遺跡の分布調査を継続し、同地方のダス、パッタン、ベシャム、アライ、マンセーラ、アボッタバード、ハリプール地区とスワート地方において計52遺跡を踏査し、分布地図作成、表面遺物採取、撮影、実測を行った(遺跡名、データについては別添レポート参照)。 また、特に優良と思われた2つの遺跡については小規模な発掘をともなう踏査を実施した。 その第一は、ハリプール市の南東約15kmに位置するコーテ・パハリ遺跡である。本遺跡は、ハリプール市を中心とする沖積平野を一望する高さ約500m程の岩山の山頂にあり、昨年度の調査で、ガンダーラ地方の石造建造物に特有のダイアパー積という石積法を用いた建物の基壇が残存している事が確認され、仏教遺跡と推測していたものである。しかし、本年度、測量調査および試掘調査を行った結果、古代の主要幹線道路と平地の都市群を一望する山上の城塞遺跡とみなすべきものである事が明らかとなった。東西交渉路上の都市文化のあり方を探る上で格好の対象である本遺跡に関しては、今後、遺跡全域にわたる本格的な考古学調査を進め、その年代、規模、構造などの解明が必要不可欠であろうと考える。 第二は、ベシャムの東方約30km、アライ川の上流沿岸に形成された舌状台地一帯に分布するアライ地区遺跡群である。すでに地元住民の手によってこの耕作地の各所から考古学的遺跡が発見されているという情報をもとに、同地区ポ-カル村内で6遺跡、周辺の村落で5遺跡を調査した。なかでも、少なくとも4基のストゥーパを具えたポ-カル・ストゥーパ遺跡は、同地区において初めて発見された仏教遺跡として極めて重要な意義をもっている。すなわち、周囲を山々に囲まれ、その地勢からみて小王国を形成していたと推測されるこの地に仏教が及んでいた事が確認されたばかりでなく、同地区南方の同じインダス川東岸に位置するタキシラや、インダス川対岸のスワートなどの地区と本遺跡との比較研究がなされる事により、インダス川を挟んで東西に分かれる古代交易路をより明確に辿る好適な材料となるのである。 また、この仏教遺跡と隣接する住居遺跡からは、大量の土器をはじめ、コイン、装身具などを含む青銅、鉄、ガラス、玉、石製品が出土している。この中にはガンダーラ墓葬文化に属すると思われる青銅製品なども含まれる事から、同遺跡が少なくとも紀元前7〜6世紀頃から紀元後5世紀頃の間に属するものである事が確認できる。そして、青銅、ガラス製品などの資料が大量に得られた事は、この地域における交易の実態を探る資料として特筆すべき成果の1つに挙げられよう。更に地元住民の情報によれば、なお多くの古代遺跡が各所に存在するとされ、このアライ地区全域にわたって有望な考古学的遺跡の分布している可能性が考えられる。 これら2つの遺跡以外にも、アボッタバード近郊、マンセーラ西部、パッタン、ベシャムなどでも古代交易研究の上で有望と思われる遺跡が発見されており、本調査研究によってこれまでほとんど未調査のまま残されていたハザーラ地方の考古学的空白を埋めて余りある多大な成果が得られつつある。今後、遺跡分布図の作成の継続はもとより、これらの遺跡を盗掘から守るためにも、パキスタン考古・博物館総局との協力体制の下、各遺跡の精査を早急に行なってゆく必要がある。
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