研究課題/領域番号 |
04041111
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
沖野 啓子 (森島 啓子 / 沖野(森島) 啓子) 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (70000247)
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研究分担者 |
OLIVEIRA Gia サンパウロ大学, 農学部, 助手
ANDO Akihiko サンパウロ大学, 農業原子力センター, 教授
MARTINS Paul サンパウロ大学, 農学部, 教授
大原 雅 北海道大学, 農学部, 助手 (90194274)
島本 義也 北海道大学, 農学部, 教授 (00001438)
OHARA M. Faculty of Agric., Hokkaido University
OLIVEIRA G.C.X. Dept. of Genetics, ESALQ, USP
MARTINS Panl サンパウロ大学, 農学部, 教授
佐野 芳雄 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助教授 (70109528)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
12,500千円 (直接経費: 12,500千円)
1993年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1992年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | 野生イネ / 生活史特性 / 生態遺伝学 / アマゾン河 / 遺伝資源 / 深水抵抗性 / 赤道地域植物の開花期 / 水生植物 / 熱帯植物の開花期 |
研究概要 |
1992年にアマゾン大支流の一つネグロ河流域の調査を行ったのに続いて、今年度はアマゾン本流ソリモンエス河の調査を行った。昨年度同様に国立アマゾン研究所の調査船を借用し、1993年5月9日〜6月11日の32日間、マナウスからテフェの上流までの区間を途中の支流にも入りながらイネ属野生種を中心に植物資源の調査を行った。ブラジル隊がマナウスから出航、日本隊はテフェまで航空機で行きそこから後半の調査に合流した。往路での予備調査を参考に調査地点を決め、調査と採集を行いながらマナウスへもどった。 1992年・1993年2回の調査により、合計103地点で生育環境と植物に関する記録をとり、野生イネについてはOryza glumaepatula(2倍体種、AAゲノム)68集団、O.grandiglumis(4倍体種、CCDDゲノム)61集団から採種することができた。このうち、25地点は、両種が混生あるいは非常に近接して生育している場所であった。2回の現地調査で得られた野生イネに関する主な知見を以下に記す。 1.ソリモンエス河の水のpHは私共の調査地点で5.5〜6.5であり、昨年度調査したネグロ河(例外的にpHの高い一つの支流リオ・ブランコとその河口を除くと、4.6〜5.5)とは異なる水系であることを確認した。ソリモンエス河ではO.glumaepatula,O.grandiglumisの2種が共に広く分布しており、ネグロ河流域ではリオ・ブランコを除くとO.glumaepatulaのみが分布していたのと対照的であった。このことからO.glumaepatulaはpHの低い水系(あるいはそれによる生物種多様性の低下に由来する〓〓〓貧栄養の条件)でも生育できる広い適応性を持つと考えられた。 2.1993年はアマゾン上流域で降雨量が例年になく多かったため、増水期の水深が前年より約3m深かった。場所によっては水深数m以上にも達する河岸や湖畔でこれら2種の野生イネが見出されたが、増水に対する両種の適応戦略は明らかに異なっていた。即ち、O.glumaepatulaはある程度節間伸長した後(主稈の出穂後か?)茎の途中で折れて上部は水面上に浮き、水中根によって生育を続け上位節からの分けつが開花・結実する。一方、O.grandigumisは高度の節間伸長能力を持ち、河底に根をつけたまま茎を伸長して穂を水上に押し上げ
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る。 3.私共の調査は2回ともアマゾンの増水期であったが、現地の住民からの聞き取り調査やブラジル側研究者の観察などから乾期(9月〜10月)の野生イネの生育状況について情報を収集した。それらの状況証拠は、一致して、O.glumaepatulaは主として種子で、O.grandiglumisは主として前年の茎から無性的に繁殖していることを示唆した。 4.アマゾン河は複雑な水系とそれらにつながる大小無数の湖とから成る。その水系にそって広範に分布する野生イネの集団にどのような遺伝的細分化構造が生じているかは、今後計画している分子マーカーによる遺伝変異の解析を待たなくてはならない。しかし現地調査から、遺伝子流動に関わる要因として、草食魚による種子伝播や、完全な浮草型として下流へ長距離移動するなど、アマゾン特有の移住様式を明らかにすることができた。 5.年間を通じて日長も温度もほぼ一定の赤道直下で、植物がどのように開花期を調節しているかは興味ある問題である。野生イネのような水生植物の場合には、水深の変化パタンが重要な要因と考えられる。今回実施した聞き取り調査によると、野生イネの開花期のピークは増水期の1月〜4月、O.grandiglumisはその約1カ月後であるらしく、私達の調査時期は、少なくともO.glumaepatulaに関しては主な開花期は終り上位節から生じた二次分けつの開花・結実期と思われた。初年度の採集系統を用いた予備的栽培実験によると、O.glumaepatulaは同一個体が年2回の開花期を持つが、O.grandiglumisは1回だけ開花する傾向があること(サンパウロ)、また赤道直下に生育するにもかかわらずO.glumaepatulaの多くの系統は短日感光性を持つこと(三島)などが明らかになった。アジアの深水耐性イネで知られている適応形態、すなわち最大水深期あるいはその直後に出穂するよう調節された感光性を持ち、花芽形成後は節間伸長しない型とは全く異なるこのアマゾン野生イネの開花習性の解明は今後の課題である。 採集種子は各サンプルを三つに分け、サンパウロ大・遺伝研・北大で重複して系統維持するが、大量の種子増殖は遺伝研が分担する。この機会を利用して採集したアマゾン沿岸のキャッサバ・ランなどの系統はサンパウロ大学で系統保存しながら進化研究に用いる。 1993年8月に分担者の一人Martins教授を招聘し、研究成果の取りまとめおよび今後の共同研究について相談した。現地調査の結果は英文で取りまとめ、6章から成る本文と各調査地点の環境条件や各集団の特性などの記録を収録した付表をつけた106頁の小冊子体として印刷し年度末に配布できる予定である。 隠す
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