研究課題/領域番号 |
04041120
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片山 一道 京都大学, 理学部, 助教授 (70097921)
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研究分担者 |
柴田 紀男 天理大学, 国際文化学部, 教授 (60122363)
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研究期間 (年度) |
1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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キーワード | クック諸島 / 先史ポリネシア人 / 民族形成 / 形質人類学 / 比較言語学 / 先史考古学 / 古人骨 / フィジー |
研究概要 |
本研究の主要な目的は、次年度から3年間の計画で実施する予定の大規模な発掘調査に向けて、クック諸島マンガイア島のワイロロゴ遺跡で、この遺跡が形成された年代、規模、古人骨や考古遺物の埋蔵状況などについて、さらには現地での調査協力などについて、予備調査を行うことであった。またフィジー諸島の適当な場所で、来年次から発掘を始めるための有望な先史遺跡を発見することであった。まずワイロロゴ遺跡では、2週間かけて、簡単な試掘調査を行った。この調査の目的は、この遺跡の広がりと構造、埋蔵文化財の質と量を吟味するとともに、年代測定試料や古人骨資料などの各種のサンプルを集めることであった。本予備調査の結果、この遺跡に希にみるほどの大規模な埋葬遺跡が含まれ、予想をはるかに上回る量の古人骨が眠っていることが判明した。しかし簡単な年代測定の結果、期待していたよりも新しく、だいたいのところ今から8百年ほど遡る紀元1100年頃の遺跡であることもわかった。しかしたんなる埋葬遺跡ではなく、住居跡なども含む複合遺跡で、種々の生活遺物などの埋蔵量も相当な量にのぼり、年代はともかくとして、遺跡の規模としては南太洋でも最大級のものであることもわかった。今回の予備調査で、クック諸島政府、マンガイア島議会、土地所有者などからの必要な調査許可も得られた。また現地の発掘補助員の手配など、諸般の準備もほとんど完了できた。この調査に並行して、ワイロロゴ遺跡から生活遺物として発掘されるはずの魚介類遺物を分析するためのコントロール資料を採集するとともに、漁労活動や魚法、魚貝類フォウナに関する民俗学的な情報を聞き集めた。 次に10日間、フィジーで一般調査を行った。まずビチレヴ島北部のラキラキ地区でいくつかの地点を踏査して、先史遺跡の分布調査を行った。その結果、島全体が遺跡の様相を呈して、さまざまな土器類が表面採集できる、ビチレブ島の最北部にあるナヌヤコト島が、来年度から始める発掘の候補地としては最も有望であるという結論に達した。この遺跡では埋葬遺跡の存在は確認できなかったが、大量の土器破片が散在しており、遺跡の規模はすこぶる大きいことが分かった。ここから採集した土器片の試料を持ち帰って、ニュージランドと日本の関連研究者の鑑定を仰いだところ、大略2千年程度は遡るフィジー式の土器であることが判明した。併せて、フィジー博物館や南太平洋大学、さらには土地関係者などを訪問して、調査許可や発掘許可などについての情報収集を行うとともに、現地協力体制について具体的な協議をおこなった。フィジー政府の関係機関からの許可取得交渉はまだこれからであるが、土地の所有者のY.トキトウ氏からは発掘許可の内諾をえることができた。最後にニュージーランドに赴き、フィジーで採集した土器の鑑定を依頼したり、フィジーのシガトカ遺跡で出土した2千年前頃の古人骨資料を査察した。このシガトカ人骨は、ナヌヤコト遺跡で古人骨資料が発見された場合、比較資料として重要なデータを提供することになるはずで、将来の検査許可を取り付ける必要があった。 この他に研究分担者の柴田は、従来から進めているマンガイア語の辞書を完成すべく、現在はあまり使用されなくなったが、かつては常用語であったおぼしき古層語彙の収集に努めた。今回は、生業活動に関する語彙を重点的に集めるのが目的で、約20日間のマンガイア島滞在中、2名の高齢男性者とのインタビュー、セッションを延べ16回開いた。その結果、古層マンガイア語の語彙資料を中心とした約22時間分に及ぶ緑音テープと約120ページにわたる聞き書きテキストを採集した。これら収集資料は、これまでに集めた資料と合わせて、柴田の研究室で、現在のところ、鋭意分析中である。この2年ないし3年の内には、1冊のマンガイア語辞書として公表できるものと期待される。
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