研究分担者 |
木山 喜隆 新潟大学, 理学部, 助手 (50018272)
田口 真 東北大学, 理学部, 助手 (70236404)
岡野 章一 東北大学, 理学部, 助教授 (10004483)
福西 浩 東北大学, 理学部, 教授 (90099937)
北 和之 東京大学, 理学部, 助手 (30221914)
岩上 直幹 東京大学, 理学部, 助教授 (30143374)
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研究概要 |
この研究は太陽地球系エネルギー国際協同研究計画(STEPの課題のひとつを実施するためのものである。わが国のSTEP計画において電離圏・熱圏結合系のエネルギーと力学が研究領域のひとつとして設定されている。この領域における興味ある現象に電離圏F領域の赤道異常がある。この現象は,磁気赤道をはさんだ地磁気緯度±15度の帯状においてF領域電子密度が異常に高いというものである。この構造はほぼ恒常的に見られ,その平均構造は,電離圏電場と地球磁場の存在下でF領域プラズマのドリフトと両極性拡散の複合効果として造られるとされている。しかも,その構造はダイナミックに変動し,時折し電子密度の欠損が磁力線に沿って起こり,非線型的な電子密度の濃淡の縞が発生することが知られている。こういった赤道異常帯におけるF領域プラズマのダイナミックな挙動と波動の発生要因については,まだ定量的には不明な点が多い。これまで行われてきた人工衛星による直接測定や,短波電波を用いたサウンディングによるデータだけでは,研究を進めていくのには限界があるからである。 この研究では,電子が酸素分子イオンと再結合反応を起こす際に発生する酸素赤線大気光を測定する,という光学的リモートセンシングの手法を用いる。これによってF領域電子密度の空間的微細構造の熱圏風系の時間変動を観測し,F領域プラズマ不安定波の励起メカニズムと成長過程を研究し,熱圏波動の駆動源を探ることをねらっている。 赤道異常帯を観測する地点として,設営と天候の条件を考慮して,ハワイのマウイ島ハレアカラ山頂とインドネシアのジャワ島東部ワトコセッの2点を選んだ。前者は赤道異常の北帯に当たり,標高3000メートルの山頂にあるハワイ大学の観測棟を借用でき,雲の妨害をほとんど受けずに全天観測が可能である。後者は赤道異常の南帯に当たり,インドネシアの航空宇宙庁大気研究開発センターの気球基地がある。ここでは東京大学理学部が現地研究者と協同でオゾンの観測を実施しており,現地の協力を得ることが容易であり,天候条件も雨期を除けば満足のいく状況である。さらに数年前には大気光測定器を当地に送って予備的な観測を行ったという経過もある。 ハレアカラ山頂における観測のため,2月7日より3月7日の1ヶ月間現地に滞在した。実際の大気光観測は主に新月をはさんだ2月13日より3月2日の約2週間にわたって実施した。観測に使用した観定器は高速掃天型大気光観定器,単色全天撮像器,および酸素赤線用撮像型ファブリ・ペロー干渉計であり,これらによって,酸素赤線強度の全天分布と酸素赤線のドップラ温度と偏位の天空分布を測定した。また中間圏・下部熱圏起源の大気光輝線についても強度の全天分布を測定したので,大気波動の励起源を推定する際参考にする。これらの観測により,赤道異常帯におけるF領域プラズマの動態を研究するうえで貴重なデータを取得することができた。大気光強度の全天分布から,F領域電子密度の水平構造と縞構造の変動の力学に関する解析を,ドップラ温度と偏位の天空分布から熱圏の気温と風系に関する解析を行う予定で,現在データ処理を進めている。 ワトコセッヘの派遣は11月25日から12月6日の期間であった。すでに現地に設置してある大気光測定器を修理しオーバーホールを行って,現地研究者と観測実施について詳細計画を打ち合わせることを目的とした。使用する測定器は東西方向走査型の多色測定器であり,ハレアカラ山頂で使用するものより性能は落ちるが,東西方向の大気光の縞構造を検出するのには十分である。これによって赤道異常の南帯と北帯におけるF領域プラズマの挙動を比較研究することができる。現地滞在中に測定器の整備を終わり,観測を実施しようとしたが,天候に恵まれず測定データは得ることができなかった。しかしながら現地の研究者に観測を依頼しておいたので,今後測定データを得られる目途はついている。12月〜3月は雨期のため観測の機会はあまりないようであるが,現地でに若干の測定データがこちらに届いており,データ解析を進めている。
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