研究課題/領域番号 |
04044022
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高木 相 東北大学, 工学部, 教授 (30005235)
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研究分担者 |
徳田 正満 NTT通信網総合研究所, EMC研究グループ, リーダー
神田 元久 米国商務省標準技術研究所, 研究室長
馬場 健造 東北大学, 科学計測研究所, 助教授 (40006151)
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研究期間 (年度) |
1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1992年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 時間領域法 / EMC / 電磁環境両立性 / 環境電磁工学 / インパルス性ノイズ / 不要電磁波 / アンテナ |
研究概要 |
通信・電子・情報機器に誤動作を及ぼすノイズはインパルス性であるため、周波数領域法による測定が因難であり、時間領域法による測定法の開発が強く要望される。本報告は、不要電磁波放射特性や、伝送線路および電気・電子回路のノイズなどEMC(電磁環境両立性)問題に向けた時間領域測定技術開発への可能性を探るために、米国商務省標準技術研究所(NIST)および国内各地の研究機関などを訪問して、時間領域法および関連技術の実態を調査したことに関するものである。 1.NISTでは、電波暗室内で吸収を装備した壁面からの電磁の反射特性を測定する研究を行っている。この測定には、被測定壁面からの反射の他に、床面、左右の壁、天井、測定機器用可動台などからの反射やアンテナ内部での反射が重なるため、周波数領域法では、高精度測定が因難である。NISTでは、これを30MHzからIGHzまでの帯域で時間領域法で測定し、反射係数を計算してよい結果を得た。また、NISTでは、ネットワークアナライザを用いて、物質の複素誘電率や複素透磁率の高周波特性を正確に測定する研究を行っている。それは、最適化の技術を取り入れたデータ解析に関するもので、(1)試料の長さが半波長の整数倍である時の特異点や、(2)導波管や試料の長さ、遮断波長などの数値の誤差や、(3)散乱マトリクスへの高次モードの影響、などに原因する計算結果の誤差を排除する方式のものである。 2.情報機器のEMC試験評価や、電波暗室・TEMセルなどの時間領域法による特性評価のためには、小型で広帯域で、電磁界の正確な測定や放射電磁界を理論的に計算できる型のアンテナを必要とする。NTTでは、以下の2種類のアンテナに関する研究を行っている。(1)球状ダイポールアンテナは、小型にできる利点がある。NTTでは、放射レベルや周波数を制御するためのケーブルとして光ファイバーを用い、球内にO/E変換器を内蔵させることにより放射電磁界強度を理論的に厳密に計算できるようにした。また、30MHz〜1GHzの周波数にわたって連続発振を可能にし、更に、インパルス性の電磁波も発振できるようにした。(2)従来、感度が悪いとされていた光変調器を用いた受信アンテナの改良を行い、感度を50dB程度改善している。また、半値幅5ns、ピーク値10V/m程度以上のインパルス性電磁界の測定を可能にした。更に、NTTでは、DCから1GHz以上の周波数において電磁波印可イミュニティー試験が可能なGTEMセルの研究をしている。 3.東北大学の本研究者の研究室では、時間領域法による生物試料などの電気的特性の広帯域高速測定や、テレビ視におけるランダム性バースト雑音による画像劣化の研究などを行っている。 4.その他、(1)名古屋工業大学では、静電気放電(ESD)による電子機器の誤動作発生機構解明の基礎研究として、帯電気の静電気分布の可視化や歩行動作による人体の帯電特性の研究を行っている。更に、人間の頭部の各部位の電波吸収率の研究を行っている。(2)東京農工大学では、電子回路や回路素子に関連するノイズ発生や耐性(イミュニティー)の問題の多方面からの研究を行っている。(3)関西電子工業振興センター(KEC)ではEMC関連の測定や試験を、極めて多方面にわたっている。(4)電波吸収材体の材料定数の測定は、同軸導波管法による破壊測定が一般的であるが、トーキンなど生産現場では生産ラインに乗せた非破壊測定法の開発が要望されるとしている。 以上のように、時間領域法によるEMC測定技術、および、その関連技術の研究は活発に行われている。実際の電磁環境の電波暗室内での再現や、TEMセルのインピーダンス特性の時間領域測定に関する研究などもあり、時間領域法による測定・評価の実用化を目指した研究が着実に進行しつつある。将来、時間領域法が、この分野での一つの有力な測定手段になると思われるが、一方で、効率的な広帯域解析法や測定精度の向上など、取の組むべき課題も多い。今後、それらの問題点に焦点をあてた研究を推進したい。
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