研究分担者 |
SUUBERG E.M. ブラウン大学, 工学科, 教授
LARSEN J.W. リハイ大学, 化学科, 教授
中村 和夫 大阪ガス(株), 基盤研究所, 課長
相田 哲夫 近畿大学, 九州工学部, 教授 (50192836)
野村 正勝 大阪大学, 工学部, 教授 (10029184)
真田 雄三 北海道大学, 工学部, 教授 (50109485)
E M Suuberg ブラウン大学, 工学科, 教授
J W Larsen リハイ大学, 化学科, 教授
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研究概要 |
本研究は新たな展開をみせている石炭の架橋構造(石炭の三次元構造)の分子レベルでの解明と新しい高効率変換プロセスの設計を目的として平成4年,5年度の2年間研究を行い,次のような研究成果を得た。 1.溶媒抽出および膨潤からの架橋構造研究 架橋構造が石炭中の溶媒可溶成分を除くことによりどのように変化するか,又,溶媒可溶成分自身はどのような架橋構造をしているのかを検討した。日本側(東北大)で調整した溶媒抽出物および残渣を米国(ブラウン大学)で主として示差走査熱量測定(DSC)を用いてその架橋構造を調べ,抽出率により構造が大きく変わることを見出した。又,膨潤特性測定装置を用いた膨潤現象の動力学的検討を行い,ファンデルワールス相互作用,水素結合等の非共有結合による架橋構造の重要性について明らかにした。 2.石炭の水分量による石炭構造の変化 褐炭中の水分量の変化による石炭構造,特に非共有結合による架橋構造の変化について共同研究を行った。種々の手法で水分量を調整した石炭を試料とし,流通式微少熱量計を用いて溶媒(水・プロパノール)との混合熱,吸着・脱着熱等を測定した。その結果,水分量の違いにより混合熱等の熱量が変化することが確認された。流通式微少熱量計より得られるデータおよび北大で行っている電子常磁性共鳴測定(EPR),DSC,膨潤度測定等のデータと,コンピュータシミュレーションによる水分量による石炭構造変化とをあわせて考察することによって,水分量が変化することにより石炭中の水素結合などの非共有結合による架橋構造が変化することが推定された。 3.石炭中の分子間相互作用に関する研究 石炭中の分子間相互作用としては水素結合,芳香環同士のπ電子間相互作用,電荷移動相互作用,イオン間相互作用などが重要であるが,ここではテトラシアノエチレン(TCNE)と石炭分子との間の電荷移動相互作用を溶媒抽出物の溶解性におよぼすTCNEの効果(TCNEの存在下で溶解性は大きく増大した)と石炭-TCNE系の電気伝導度測定の研究を行い,高ランクの石炭とTCNEとは強い相互作用をもつことを明らかにした。又,石炭-TCNE系のフーリエ変換赤外吸収測定(FT-IR)を行い,石炭とTCNE間の相互作用により石炭からTCNEへ電荷の移動が起きていることを確認した。この結果から石炭中の分子間相互作用の解放による石炭の低分子化が考えられ,新たな石炭の高効率変換法の一つとして有効であることを明らかにした。 4.石炭構造モデルのコンピュータシミュレーション 石炭構造モデルのコンピュータシミュレーションをCAMD(計算機支援分子設計法)で行い,そのモデルの妥当性を実際の石炭の密度をモデルのそれと比較することにより検討し,ほぼ満足のいくモデルを構築した。又,非共有結合による架橋構造モデルとして石炭の溶媒抽出物の会合構造のCAMDによるコンピュータシミュレーションを行い,会合構造をとりやすいことを示した。ここで構築された石炭構造モデルと本研究で明らかにした石炭の架橋構造についての情報をもとにして,新たな高効率石炭変換プロセスの設計の指針に関して日米両国の研究者で討論され,その方向が示された。 この研究分野の研究者は世界各国において着実に増加しており,今後のエネルギー源の担い手である石炭の画期的な無公害高効率利用プロセスの開発を最終ターゲットとしてこの共同研究をさらに展開していきたいと考えている。
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