研究課題/領域番号 |
04044027
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
広瀬 忠樹 東北大学, 理学部, 教授 (90092311)
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研究分担者 |
WERGER M.J.A ユトレヒト大学, 生物学部, 教授
M J A Werger ユトレヒト大学, 生物学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1992年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
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キーワード | 草原植物群落 / 生産構造 / 光分布 / 葉面積分布 / 窒素分布 / 乾物分布 / 多種共存系 / コストベネフィット分析 / 葉面積指数(LAI) / 葉面積比(LAR) |
研究概要 |
1。平成4年6月-8月と平成5年6月に、研究代表者はオランダのユトレヒト大学に滞在し、以下の草原群落において調査研究を行った:ライン川河川敷草原、ユトレヒト近郊牧草地、リンブルフ石灰性草原およびその栄養添加実験区、ユトレヒト近郊湿地草原。また、平成5年5月-8月に宮城県川渡のススキ草原において調査を行った。群落内の光分布と群落構成種ごとの葉面積分布、乾物分布、N分布を測定した。平成5年10月から3月まで、研究分担者を招へいし、調査研究結果を解析することにより、植物群落の多種共存の機構に関して新しい理論(次の2、3)を展開することができた。 2。植物群落内には光環境(光量子フラックス密度、PPFD)の大きな勾配が発達する。異なる層位を占める種にとって利用できるPPFDには大きな相違がある。植物が吸収するPPFDは群落の上層を占める種(優占種)が下層を構成する種(従属種)より大きい。しかし、優占種が地上部乾物重量あたりに吸収するPPFDはかならずしも大きくはない。植物の地上部乾物量をPPFDを吸収するために投資されたエネルギーコストとみなせば、植物(葉)が吸収したPPFDはベネフィットになる。いま両者の比(ベネフィット/コスト)としてΦmassを定義すれば、これはPPFDを捕捉するための地上部への投資効率を表す。ΦmassはLAR(地上部乾物量あたりの葉面積比)とΦarea(葉面積あたりに吸収するPPFD)の積に解析できる。Φareaは優占種ほど大きいが、LARは従属種ほど大きい。したがって、両者の積としてのΦmassは従属種で大きくなりうる。LARはさらにLWRとSLAの積として表すことができるが、従属種は大きいSLAをもち、これが効率的な光捕捉効率に寄与していることが示された。 3。光と異なりNの供給には優占種と従属種との間に差がないとすれば、優占種にとっては光よりもNが制限的となり、従属種にとってはNよりも光が制限的となっていることが予想される。もしこの仮説が正しければ、優占種のN利用効率は従属種よりも大きく、葉N濃度は従属種で大きいことになる。反対に、群落が全体としNを有効に利用して生産を行っているのであれば、優占種の葉N濃度は従属種の葉N濃度より大きいことが期待される。弱光下より強光下のほうが、単位葉N増加あたりの光合成の増加の割合は大きいからである。以上の仮説のもとに、群落を構成する種のN利用効率(NUE)を、(1)地上部のN濃度の逆数として評価した成長におけるNUE、(2)単位葉Nあたりに吸収したPPFDとして評価したin situ PNUE、(3)単位葉Nあたりの光飽和CO2交換速度として評価したpotential PNUEにより比較した。その結果、弱光下で生育している従属種のNUEは(1)(2)(3)のいずれによっても優占種より小さいことはない。これが多種共存の必要条件であることが示唆された。 4。平成4年6月-8月、多年生草本イタドリとカリヤスモドキの実験群落をつくり、群落構造(広葉型とイネ科型)の異なる群落、C代謝(C3とC4)の異なる群落の生産構造と群落光合成におけるN利用効率の比較研究を行った。 5。平成5年6月-8月、イネ(C3)とその雑草イヌビエ(C4)の純群落と混合群落をつくり、生産構造とN利用効率の比較研究を行った。 6。平成4年6月から7月にかけて3週間、熱帯南アメリカの植物群落構造の比較研究に参加し研究調査を行った。 7。平成5年9月に草原植生を研究している海外の研究者5名を招へいし、草原植物群落の生産構造に関する研究セミナーを開催し、研究発表・討論を行った。
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