研究課題/領域番号 |
04044029
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 九州大学 (1993-1994) 東北大学 (1992) |
研究代表者 |
赤池 紀生 九州大学, 医学部, 教授 (30040182)
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研究分担者 |
YATANI A. シンシナチ医科大学, 薬理・細胞生物物理学, 教授
BROWN A.M. ベーラ医科大学, 分子生理・生物物理学, 教授
BEHRENDS Jan マックスプランク精神医学研究所, 神経生理部門, 研究員
原田 伸透 九州大学, 医学部, 助手 (90264043)
徳冨 直史 (徳富 直史) 熊本大学, 医学部, 講師 (30227582)
鍋倉 淳一 (鍋倉 純一) 秋田大学, 医学部, 助教授 (50237583)
LUX H.D. マックスプランク精神医学研究所, 神経生理学部門, 教授
河 和義 東北大学, 医学部, 助教授 (70125839)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
21,500千円 (直接経費: 21,500千円)
1994年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1993年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1992年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 中枢神経細胞 / 薬理学的分類 / GTP結合蛋白 / パッチクランプ法 / ニスタチン / カルシウムチャネル / 細胞内カルシウム / セカンドメッセンジャー |
研究概要 |
最終年度は1.イオンチャネル直結型レセプターを介した細胞外からのCa^<2+>流入、2.細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>の遊離、3.シナプス伝達に関与する電位依存性Ca^<2+>チャネルの同定の3点に関して研究を進めた。 1.2-3週齢のウィスターラットより急性単離した中枢ニューロンに、ニスタチン穿孔パッチクランプ法を適用し、Yチューブ法にて薬液を投与した。大脳皮質の錐体ニューロンに興奮性アミノ酸の1つであるカイニン酸を投与すると、保持電位-40mVで内向き電流が惹起され、カイニン酸のwashoutと共に外向き電流が記録された。内向き電流はイオンチャネル直結型グルタミン酸レセプター(iGluR)の活性化によるラージカチオン電流、外向き電流はラージカチオンチャネルを通って流入したCa^<2+>が活性化するCa^<2+>依存性K^+電流(I_<X(Ca)>)であることが示された。この外向き電流が細胞内Ca^<2+>ストアを枯渇するリアノジンに影響されないことから、細胞内Ca^<2+>ストアは[Ca^<2+>]_1の上昇に寄与していないことが示された。次に生後1日〜1年半のラットより急性単離したマイネルト基底核のニューロンを用い、脳発達に伴うiGluRの変化を検討した。保持電位-40mVでNMDAにより惹起される内向き電流は1日目から2週間目にかけて激滅し、1年後には殆ど認められなくなったのに対して、カイニン酸による内向き電流は発達と共に増大した。カイニン酸はI_<X(Ca)>も惹起し、この外向き電流は発達と共にピーク電流値が増加し、下降相が遷延化した。またNMDAレセプターのCa^<2+>透過率(P_<Ca>:P_<Cs>)は2日目から6ヶ月まで6.8〜7.5と一定だったのに対し、カイニン酸レセプターでは1日目で2.8、2週間目で1.1、6ヶ月で0.4と著しく減少していた。また生後1日ではNMDA、カイニン酸の両者が[Ca^<2+>]_1を上昇させるのにも関わらずI_<x(Ca)>が記録できなかった。これらのことから、NMDAレセプターは発達と共にCa^<2+>透過性が一定のまま発現量が減少すること、カイニン酸レセプターは逆にCa^<2+>透過性が減少しながら発現量が増加すること、加えてI_<x(Ca)>が生後発達に伴い出現することが明らかとなった。 2.細胞内Ca^<2+>ストアの関与する応答として、骨髄巨核球におけるプリンレセプター応答を解析した。膜電位固定下にATPを持続投与すると周期的な外向きK^+電流(オシレーション)が誘発された。本応答におけるアゴニストの親和性は2-methyl-ATP>ADP>ATPγS>ATPの順であり、かつアデノシンが無効であったことから、これまで知られているプリンレセプター(P_<2x-S>、P_<2γ>)のいずれとも異なると考えられた。BAPTAやIP_Sなどの細胞内潅流の結果から、この膜電流のオシレーションは新規のプリンレセプター→G蛋白質→フォスフォリパーゼC→IP_S→IP_S感受性Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>の遊離→I_<x(Ca)>の活性化という経路が考えられた。このオシレーションはCキナーゼの活性化剤であるフォルボールエステルや、cAMPを増量するフォルスコリンやIBMXにより抑制されたうえ、カルモジュリン拮抗剤であるW7、トリフルオペラジンにより降下相のみが阻害された。従って上昇した[Ca^<2+>]_1が活性化するCキナーゼとカルモジュリン、ならびに他のレセプター刺激により上昇したcAMPなどがネガティブフィードバックをかけることが判明した。 3.我々が新規開発したマイネルト基底核のシナプスボタン標本を用いて、シナプス伝達に関与する電位依存性Ca^<2+>チャネルの特性を調べた。シナプス前神経終末からGABAが遊離されて記録されるシナプス後ニューロン上のGABA_Aレセプター応答はP型のブロッカーであるω-Aga-IVAにより濃度依存的に抑制されたが、N型Ca^<2+>チャネルのブロッカーであるω-CgTX-GVIAには影響を受けなかった。L型ブロッカーのニカルジピンは細胞体での有効濃度よりも100倍低い濃度で抑制した。以上のことからGABAを遊離する神経終末部のCa^<2+>チャネルはL、P型であること、加えて神経終末部とシナプス後膜ニューロンに存在するL型チャネルは性質が異なることが示唆された。 平成4-6年度にわたる共同研究により、Ca^<2+>が中枢ニューロンの機能発現において果たす役割が非常に明確になった。今後は更に研究を進め、Ca^<2+>動態と神経系の病態との関連などを明らかにしたい。
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