研究分担者 |
原 忠生 国立弓削高専, 教授 (60013413)
藤本 真克 国立天文台, 助教授 (90107475)
水本 好彦 神戸大学, 理学部, 助教授 (20219653)
河辺 征次 高エネルギー物理学研究所, 助教授 (10044786)
松原 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (80202323)
村木 綏 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (70013430)
荻尾 彰一 東京工業大学, 理学部, 助手 (20242258)
谷森 達 東京工業大学, 理学部, 助教授 (10179856)
林田 直明 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (50114616)
R.W. CLAY アデレード大学, 物理物理数学科, 講師
J.R. PATTERSON アデレード大学, 物理物理数学科, 講師
R.J. PROTHERO アデレード大学, 物理物理数学科, 講師
須田 英博 神戸大学, 理学部, 教授 (30011555)
藤井 啓文 国立高エネルギー物理学研究所, 助教授 (60013439)
渡瀬 芳行 国立高エネルギー物理学研究所, 教授 (70018662)
垣本 史雄 東京工業大学, 理学部, 助教授 (00092544)
手嶋 政広 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (40197778)
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研究概要 |
ガンマ線パルサーPSR1706-44からの1TeV=1,000GeVのガンマ線を検出した。ガンマ線信号の検出は前年度の観測において示唆されていたが、本年度の7月、8月に実施した観測のデータによって再確認され検出の統計的信頼度は13σとなった。“かに"パルサー、帆座パルサーなど、0.1-10GeVのガンマ線エネルギー領域で5つのパルサーがガンマ線衛星によって発見されているが、このパルサーはそのうちの一つである。このPSR1706-44についての1,000GeVガンマ線の検出はわれわれの結果が最初であり、チェレンコフ望遠鏡を用いて行なわれる1,000GeV領域における信頼度10σ以上の検出としては、PSR1706-44が“かに"パルサー/星雲についで2番目の天体となる。 “かに"パルサー/星雲のデータについての解析が一段落しエネルギー閾値7TeVで(7.6±1.0)×10^<-13>cm^<-2>s^1、信頼度4σの結果を得た。“かに"パルサー/星雲は北半球での観測が有利な天体であり、南半球でのわれわれは大天頂角(53^。-56^。)での観測を強いられるが、この天体の観測は米国など他のグループの結果と比較するために重要である。大天頂角ではエネルギー閾値が高くなる反面、ガンマ線の検出有効面積が増大する利点がある。1〜10TeVのエネルギー領域でグループにより観測されたガンマ線強度に食い違いがあり精度の良い観測が望まれているが、われわれの結果は米国のグループとほぼ一致している。10TeV近傍のガンマ線放射に関して新しい制限を付け加えた。この結果は、各グループの望遠鏡の性能を確認するための“標準的"ガンマ線源の確立に貢献し、また大天頂角での解像型チェレンコフ望遠鏡の有用性を示した。 帆座パルサーについての昨年度のデータの解析も進展し、興味深い結果が示唆されているが、統計的に優位で断定的な結論を得るために今年度も観測を継続した。さらにもう一つのガンマ線パルサーPSR1055-52についても観測を行なった。合計4つのガンマ線パルサーについての観測結果を合わせ、これらを比較総合することにより、高エネルギーガンマ線発生機構とパルサー、超新星残骸、X線を放出する星雲などとの関係に知見を与えるものと期待される。 赤方変位0.055の活動銀河PKS0521-365について観測を行ない、現在解析中である。高エネルギーガンマ線は、大質量のブラックホールが存在していると考えられる活動銀河中心核での高エネルギー現象を探るための貴重な観測手段である。活動銀河からの1,000GeV領域のガンマ線は現在までに北半球で唯一赤方変位0.03のMarkarian421から検出されている。銀河間赤外線でガンマ線は吸収を受けるためにできるだけ近傍の活動銀河について観測を行なうことが望ましく、PKS0521-365は衛星観測で発見されたガンマ線活動銀河の中で2番目に近い天体である。観測結果からはまた銀河間空間での赤外線強度に制限を与えることが期待される。その他、連星電波パルサーPSR1259-63の観測なども行なった。この連星パルサーは近星点では伴星からの降着物質の増大のためにX線星となることが予想されていてパルサーの進化を探るための重要な天体である。1994年1月に起きた近星点ではX線、電波などの同時観測が行なわれわれわれも観測を実施した。 観測データの蓄積に最大の重点をおいて本年度の研究を実施したが、ガンマ線パルサーの観測における時刻測定の精度を上げるために時刻衛星の信号を受信するアンテナを付設し、絶対時刻の較正が常時可能となった。望遠鏡の駆動を制御する回路に不調があり一カ月の欠測を余儀なくされた。鉄分を含む砂塵が回路に付着し電気抵抗が低下したためであったが、修理後は順調に稼働している。 “かに"パルサー/星雲についての観測結果は公表論文として投稿中である。ガンマ線パルサーPSR1706-44からのガンマ線信号の検出については国際天文学連合(IAU Circular5905.2)に報告し、投稿論文を現在準備中である。帆座パルサーやその他のガンマ線天体、超新星残骸や活動銀河、についての予備的解析結果は第23回宇宙線国際会議において発表した。
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