研究課題/領域番号 |
04044056
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
片山 芳文 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (20014144)
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研究分担者 |
MARTIN I. コンプルテンセ大学, 医学部, Prof titul
NORTH R.A. グラクソ分子生物研究所, 教授
LEES G.M. アバディーン大学, 医学部, Reader
TSUJI S. パリ第6大学(CNRS), Research D
三原 智 久留米大学, 医学部, 助手 (40166103)
西 彰五郎 久留米大学, 医学部, 教授 (00080557)
辰巳 仁史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (20171720)
平井 恵二 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (70156628)
NISHI S. Kurume University
MIHARA S. Kurume University
HIRAI K. Tokyo Medical and Dental University
TATSUMI H. Tokyo Medical and Dental University
NORTH R A オレゴン健康科学大学, Vollum研究所, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
11,500千円 (直接経費: 11,500千円)
1993年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1992年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | 分散制御システム / 腸神経系 / 筋層間神経叢 / 粘膜下神経叢 / 神経活性物質 / シナプス伝達 / 成長円錐 / ニューラルネット / アウェルバッハ神経叢 / マイスナー神経叢 / 神経伝達 / 成長錐 / GTP結合蛋白 / カルシウム |
研究概要 |
本研究は神経系における自律分散制御システムの作動論理にアプローチすることを目的とするものである。このために、腸管壁内に存在するニューラルネットである腸神経系の生理学的、薬理学的研究を実施し、同時に腸神経や中枢神経から分離した神経組織を培養することによりニューラルネットを構築していく素過程を解析した。以下、本研究における成果の概要を述べる。 モルモット小腸の粘膜、粘膜下組織および粘膜下神経叢を除去した標本でも筋層間神経叢と輪走・縦走平滑筋層が健在ならば 動運動を発現できることが証明された(Tsuji)。小腸の興奮性シナプスは肛門側へ向かうシステムの方が優勢であることが電気生理学的に示された(片山)。ホルモンであるカルシトニンが鎮痛効果を示す事が知られており、このカルシトニンはオピオイド・システムによる鎮痛機構に作用することが腸神経系標本を用いて証明された(Martin)。生体エネルギーに関連するATPや伝達物質前駆体と考えられているL-DOPAは腸神経系における神経伝達に対して多彩な作用を発現することが明らかにされ(片山、平井、North)、タヒキニンによるカリウムチャネルの抑制には百日咳毒素(PTX)-抵抗性のGTP結合蛋白が関与することが判明した(三原、西)。 低あるいは無酸素状態に対する腸神経ニューロンの感受性は一様ではなく、腸管を虚血状態にしても特有(classical)な傷害が見られる例はごく少数で、一般的に粘膜下神経叢では抵抗性の強いニューロンが見られた。腸神経系のコリン性シナプス伝達は低酸素状態の対して抵抗性を示す事が多い(Lees、西、三原、平井)。 ニューロペプチドY(NPY、1-100nM)がモルモット盲腸の粘膜下神経叢のslow IPSPを抑制する事が今回明らかにされた。NPYはニューロンの興奮性やslow IPSPの伝達物質であるノルアドレナリンに対する反応性を変化させず、またfast EPSPやslow EPSPにも影響しないので、NPYはシナプス前性に作用してノルアドレナリンの放出を選択的に抑制すると考えられる(三原、Lees)。同様の実験を下行結腸の粘膜下神経叢で試みたところ、slow IPSPと思われるものは極めて稀にしか観察されなかった(平井、Lees)。このことは腸神経系の機能構築の部位差を示す重要な例である。またNPY含有ニューロンの数が結腸を下行するにつれて多くなるという知見を併せて考えると、slow IPSPの抑制以外にもNPYの機能的意義があると考えられる。また血管作動性腸ペプチド(VIP)は回腸ではS細胞だけに存在するが、十二指腸ではS細胞とAH細胞の両者に存在し、かつVIPを含有する細胞の数も多い(Lees)。 培養したニューロンの神経突起に形成される成長円錐の膜にある糖蛋白にコンカナバリンAをコートした微細金粒子を付着させ、ビデオ強化型高倍率微分干渉顕微鏡システムを用いて金粒子の運動を解析した。こうして金粒子によって可視化された成長円錐の膜蛋白の動態を推測できる。一定の条件下で金粒子は特定の領域の中ではブラウン運動を示した。成長円錐に高濃度カリウムを局所的に作用させると、成長円錐の変形が起こりフィロポデイアが形成され約1μm/sの速さで伸展し、その先端部もブラウン運動を示した。またレーザ光を集光して金粒子に作用させるとその金粒子の運動をコントロールする事ができた(辰己、片山)。 アセチルコリンを伝達物質として持つ前脳部ブローカの対角帯核のコリン作動性細胞を分離・培養し、培養細胞に形成された神経突起成長円錐部の組織化学的検討を光学顕微鏡を用いて実施し、1)ACh-Eが存在すること、2)ACh-like cationが成長円錐にある小胞様構造物の中に見られること、3)免疫組織化学的にChATが成長円錐に存在することなどが明らかにされた。さらにラジオオートグラフィによる^3H-cholineの取り込みの測定から、成長円錐部における高レベルのコリン代謝が認められた。以上より、シナプスを形成していない状態の成長円錐においても、すでにアセチルコリンの取り込み、合成、貯蔵が行われていると考えられる(辰己、Tsuji、片山)。
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