研究課題/領域番号 |
04044061
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
猪飼 篤 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (50011713)
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研究分担者 |
OSTERBERG RA スエーデン国立農科大学, 化学科, 教授
ARMSTRONG PE カリホルニア大学, デービス校・動物学科, 教授
RAGNAR Oster スエーデン国立農科大学, 化学学部, 教授
PETER B Arms 米国カリホルニア大学テービス校, 動物学科, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1992年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | α2-マクログロブリン / ベイト切断 / x-線溶液散乱 / チオールエステル結合 / 4次構造変化 / α-2-マクログロブリン / X-線小角散乱 / トラップメカニスム / ペプチドワクチンキャリアー / メダラシン / 餌領域切断 / ストップトフロー法 / 生体防御反応 |
研究概要 |
本研究は血清糖たんぱく質であり、特異なプロテアーゼインヒビターとして知られるα2-マクログロブリン族分子によるプロテアーゼ捕獲機構を分子論的に解明することによりこの分子が持つ生物的作用の理解を深めると同時に、この分子の持つ得意な作用機構を利用して人間の健康向上に役立つ材料をというものである。α2-マクログロブリン族分子は餌領域アミノ酸配列のプロテアーゼによる切断をトリガーとして、チオールエステル結合開裂→4次構造変化→受容体結合部位形成と分子内反応がカスケード的に進行し、トリガーをかけたプロテアーゼをその反応特異性に関係なく捕獲するという、極めて機械的な動作特性を示す。このように機械的な動作はたんぱく質には珍しいものであり、その分子機構の解明は将来のマイクロマシンあるいは分子機械の設計および製作に大いに参考となるところである。 本研究ではまず、発見依頼30年間だれも測定することのできなかった、1)餌領域切断速度の実測、2)4次構造変化速度の実測、3)チオールエステル結合開裂速度の大まかな推定、の速度論的測定に成功した。これらの速度の測定は関係方面からは1993年度アメリカニューヨークアカデミーのシンポジウムにおいて絶賛を博した。方法としては、各ステップに特異的な測定方法を用いたので、極めて信頼性が高い。まず、餌領域の切断はα2-マクログロブリンとプロテアーゼを1ミリ秒以内に混合した後、一定時間後に酸により反応を止めて、停止液中のα2-マクログロブリンを電気泳動により分析して餌領域の切断されている割合と反応停止時間の関係を確立した。4次構造の変化は高エネルギー物理学研究所のフォトンファクトリーにおける時分割x-線溶液散乱法の解析から、分子の回転半径の変化を測定することにより得た。 一方、アームストロング教授の提供を受けて大量のカブトガニα2-マクログロブリンを精製し、その反応機構を解析したところ、餌領域切断速度、4次構造変化速度等はヒトα2-マクログロブリンの場合に近い値を得た。これは5億年以上の歳月を経て今なお両親族分子が速度論的にはよく似た反応機構を維持していることを示しており、α2-マクログロブリン族分子の分子内機構の特性と考えられる。分子機械の設計に大きな参考となるものである。 また、オステルベルグ教授との共同研究では、4量体型の分子と2量体型の分子のx-線溶液散乱実験をおこなった結果を解析し、サブユニットに配置に関する考察を深めることができた。 α2-マクログロブリンの生物的意義に関しては動物の神経細胞の突起進展作用に対する効果と、ペプチド抗原を抗原提示細胞に運び込む意味でのキャリアーとして有効である事を示すことができた。特に後者についてはかなり実用的な提案であるところから、アメリカ化学会のシンポジウムにも招待されて講演し、他の方法を提案し試行している多くの研究者と意見を交換することができ、大変有意義であった。
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